近代土木遺産として価値のある湊川隧道に関する事と、
そのトンネル内で行なわれる全国でも珍しいコンサートを紹介します。
このコンサートは、湊川隧道保存友の会が主催し、ほぼ毎月、第3土曜日に無料で開催されるものです。
別の日になったり演奏会が無かったりする事もあるので、事前調査が必要です。
詳しくは湊川隧道保存友の会HPで↓
http://www2.kobe-u.ac.jp/~rcuss/minatogawazuidou.html
そのトップページに↓
「新湊川改修事業に伴い、湊川隧道(会下山トンネル)は河川トンネルとしての役目を終えました。
しかし、構築後100年になる湊川隧道は当時の高度な土木技術で造られた貴重な近代土木遺産として、今でも残っています。
この湊川隧道を守っていくためにより多くの方に知って頂き、身近に感じていただければと思います。」
この一般公開は、平成18年8月から開催しています。
今回の案内です↓
http://www2.kobe-u.ac.jp/~rcuss/20150919.pdf
すぐ消えるでしょうから、今後の事は上記HPの方で確認して下さい。
湊川隧道(会下山トンネル)と新湊川トンネルについて↓
湊川隧道は神戸市兵庫区に位置する標高85mの会下山をくり抜く、わが国初の近代河川トンネルとして1901(明治34)年8月に完成した。
長さ600m、幅7.3m、高さ7.6mで、当時としては世界最大級の規模を有していました。
平成7年の阪神淡路大震災で大きな損傷を受け、震災以前から進められていた新湊川トンネルへ平成12年12月に引き継がれ、その役目を終えた。
新湊川トンネルは断面積で湊川隧道の約2倍、105㎡となっています。
湊川の変遷は兵庫県HPの中で紹介されています↓
https://web.pref.hyogo.lg.jp/ko05/ko05_1_000000027.html
その中から↓
「現在、新湊川と呼ばれる川は、過去に何度かその流れを変えています。古い順に古湊川、旧湊川、そして現在の新湊川(都道府県が管理する二級河川)です。
湊川は昔、石井川と天王谷川の合流点付近から現在の湊川公園を経て、新開地方面へ流れていましたが、天井川で堤防が高く、神戸(神戸市中央区方面)と兵庫(神戸市兵庫区方面)が2つに分かれて交通の便が悪くなったこと、神戸港が土砂に埋まってしまうこと、更に洪水被害がたびたび発生することなどの理由で、現在の新湊川に付け替えられました。
古湊川の流路は明確ではありませんが、平清盛(11世紀)が古湊川から旧湊川へ付け替えたとする伝説があります。」
湊川隧道への導入トンネルに掲示されていた写真です。
古湊川、旧湊川、現在の新湊川が示されています。
(以下の説明写真も含め、クリックしてご覧ください。)
清盛が付け替えた旧湊川の流域周辺は、神戸の中心として発展していきます。
そこで、上記理由から1901年に会下山に湊川隧道を通して川を流し、西にある苅藻川と合流させて長田の海へ流すようにしたのです。
しかしこれも昭和の豪雨時には水が溢れ、商店街や地域住民に水害をもたらしました。
時を経て、平成に入ります。
氾濫を繰り返していた新湊川は、阪神大震災で大きなダメージを受けました。
その復旧工事を兼ね、1時間94ミリの雨にも耐えられる大規模な拡幅工事を行い、2002年11月に工事は完了した。
(明治時代から土手は無かったが)幅10m×深さ10m程度に、擁壁がコンクリートの河川として市街地を流し、断面積105㎡の新湊川トンネルを通し、地域住民を水害から守っています。
湊川隧道と新湊川トンネルの断面比較です。
上が新湊川トンネルで、これもトンネル内に掲示されていた。
外にはその大きさを比較した掲示板があります。
で、その役目を終えた湊川隧道はどうなった↓
冒頭に書いている様に、
貴重な文化遺産として残しています。
地域住民による保存運動があり、それが行政を動かし、不要になった湊川隧道を埋めたりせず保存へと方向転換した。
先の阪神大震災では入り口部分に甚大な損害を被ったが、内部はそのままの状態でした。資金を投入して改修され、内部には照明設備も備えています。
湊川隧道に関連する説明は以上です。
湊川隧道へのアクセスは↓
地下鉄山手線・湊川公園駅又は神戸電鉄・湊川駅で下車し、
山が遠望できる北へ向かうと、8分で新湊川に架かる熊野橋になる。
橋を渡らず、左折して4分行くと湊川隧道の入口です。
私は湊川商店街で食事をしたので、そのまま北進します。
アーケードの端に来ました。
右がダイエーで、左の坂を上がります。
この坂は旧湊川の土手があった所で、その名残です。
天井川だったので、当時の土手の高さは6mと資料にあります。
南にある湊川公園に上がり、眼下の道路を眺めると当時の土手の高さが体感できます。
その湊川公園から南に続くのが新開地商店街で、土手を川に埋めて出来たものです。
かつて新開地は神戸一の繁華街で、東の浅草、西の新開地といわれていた。
坂を登って直進すると、市場を通り抜けて車道に出ます。
その信号渡って右です。
信号を渡らず右折すると~新湊川に架かる熊野橋で、初めての方はそちらがお勧め。
私は、直ぐの分岐を左へ行きます。
以後クネクネ北進すると、新湊川になる。
この夢野橋を渡らず、左折します。
新湊川はこんな風になっています。
普段は水量も少なくチョロチョロ流れる川です。
その先、下へ降りられるようになっているが、注意が必要です。
市街地に近い六甲山系が豪雨になると、暫くしてこの階段が一段一段と水没していきます。
雨が降っている時は勿論、雨が収まっても暫くは入らない方がいいでしょうね。
左は夢野の丘小学校校舎で、
子供達の通学路にもなっているところです。
やっと湊川隧道入り口に到着しました。
(湊川商店街から歩き出して数分の距離ですが^^)
これは当時のデザインを受け継いでいるとか。
この右にある信号渡って、資料を受け取り、トンネル内へ入ります。
コンサートも含め、トンネル内の撮影はOKという事でした。
入ると、右の壁に写真や説明が掲示されています。
これらを前半の説明で使用しました。
入口も、この坂(連絡通路)も、後で取り付けられたものです。
下り終えた所が本来の湊川隧道で、以前はここを川が流れていました。
コンクリート敷設の道が、木が敷かれた道になる。
じっとり濡れているのは、煉瓦の擁壁から水が滲み出しているからです。
上からポタポタ滴る所もあります。
これがコンサート会場で、
左右に3席、それが20列位でしょうか。
丁度演奏が始まるところで、
前から7列目に座れました。
奏者に当たる照明とバックライトがあるので、コンデジでは撮影し辛い。
比較的ましな写真です。
この方の様に、前の方で一脚を使った撮影がいいと思います。
1時間の演奏の途中に3分の休憩があり、フルートの小型版ピッコロの紹介。
これを加えると音域が広がり、曲に豪華さが出てきます。
加えなかったのは、トンネルの中だと音がキンキンになり、耳をつんざくサウンドになるからです。
短いフレーズで、その音色を紹介していた。
話しは戻って、
普段は入り口が閉じられているこの湊川隧道へ入れる日がある事は以前から知っていました。
今回やっとこさの訪問で、このブログ初登場です。
何故、今まで行かなかったの?↓
狭いトンネルでのコンサートなんて、
と敬遠していたのです。
しかし、想像していたものとは大違い×驚きの演奏会でした。
小さいながらコンサートに適した環境だと思いました。
今回のフルートという楽器にとって、幸せな舞台ではないでしょうか。
フルートから音が出る仕組みは↓
歌口のエッジに息を吹きかけ、その一部を共鳴させています。
http://www.yamaha.co.jp/plus/flute/?ln=ja&cn=10603&pg=2
吐く息全てが音になる訳じゃないので、他の楽器に比べると音量としては小さいです。
今回4本の合奏で音量をカバーしています。
しかし、ここではソロでも朗々と響き渡ります。
何故でしょう↓
トンネルの反響がそうさせています。
発した音がトンネルの壁に当たり、反射してそれを繰り返します。
マイクやスピーカーを設置していないのに、ボリュームを上げたように、音も明瞭になります。
トンネルの壁は硬いレンガでできているので音の反射率が高い。
しかしトンネルは球ではなく円筒形なので、反射音は一ヶ所に集まらず、残響は遠くへ逃げて行きます。
これが素晴らしい音響効果を生み出します。
トンネルという、大きな楽器の中に入っているような気分になります。
ここでやっと、グループ名の紹介です。
「音もだち♪トゥインクル」
2010年、フルートが大好きな主婦4名で結成したフルートアンサンブルです。
学生時代からブラスバンドやオーケストラに所属していたが、主婦となってから結成され、現在は老人施設や病院、幼稚園などで演奏活動を続けているそうです。
入り口で頂いたパンフレットに演奏曲のリストが載っていた。
【演奏予定曲】
♪サウンドオブミュージック
♪旅愁
♪峠の我が家(Home on the Range)
♪ゆりかごの歌
♪見上げてごらん夜の星を
他
いきなり余談です^^)
「峠の我が家」は若い人にとって、日本の歌のように聞こえるかも知れませんね↓
https://www.youtube.com/watch?v=XOPIJY_BsKc
メロディーが日本人に馴染むもので、
歌詞にある「わがいえ♪」が心に沁みます。
ところが、これはアメリカ民謡でカンザス州の州歌になっています。
日本での紹介です↓
NHK『みんなのうた』で、『峠のわが家』というタイトルで放送されました。
まず1966年8月・9月に登場し、それから2年後の1968年8月・9月には歌手を変えて再登場した。
中山知子の訳詞で、石丸寛が編曲を手掛けました(ウィキペディア要約)。
この曲が広まって、岩谷時子や龍田和夫に久野静夫も訳詞に携わりました。
どれもみな「わがいえ」「あのいえ」が登場して、日本的な歌詞です。
アメリカ民謡の雰囲気は消え、日本の歌に変身しています。
しかし、原題にあるHomeは「ふるさと」の事で、わが家など一切出てきません。
加えて、Range に峠の意味は含まれず、山脈とか平原、草原、広野、牧草地など地形の事です。
タイトルのHome on the Rangeとは、(山を背景にした)広野にある故郷と言ったところでしょうか。
正にアメリカ西部の光景で、歌詞の内容は、自然に恵まれたふるさとを恋う感情が含まれる、カウボーイの歌でした^^)
原曲の言葉が活かされず、これじゃ訳詞とは言えませんね。
作詞では?と思います。
でも、日本人の素晴らしいイマジネーションが感じ取れます。
それ以外では、
マイフェアレディ
ドレミの歌
Raindrops Keep Fallin' On My Head(「明日に向かって撃て」の主題歌)
上を向いて歩こう
など
また余談です。
「上を向いて歩こう」は英国で「SUKIYAKI」として紹介され、アメリカへ~世界へと広がりました。
「スキヤキ」となったのは↓
元のタイトルではイギリスのDJたちが発音出来ないだろうとの配慮から、日本で社長の好物だった「すき焼き」があてられたそうです。
とうりゃんせ
も、抒情的に演奏されました。
アンコールは↓
故郷(文部省唱歌)
我々観客も加え、合奏+合唱してエンディングとなりました。
このトンネル、
演奏などが無い時に、通り抜けイベントを実施している事もあるようです。
実際に使われているレンガの展示もありました。
これが素晴らしい音響効果を生み出しています。
説明してきた事とダブりますが、
「湊川隧道の保存について」が書かれています。
外へ出ると菊水山の山頂が眺められます。
展望台があるのは左の小さい電波塔でここから歩いて行けます。
そのルートを簡単に説明します。
この新湊川の上流に石井川と天王谷川の合流点がある。
左の石井川左岸を遡ると、川の流れと離れたりするが立ヶ畑ダムに辿り着く。
烏原貯水池を眺め、水と緑の回遊路を行きます。
その先、烏原川を遡ると浄水場で、その上に石井ダムがあります。
ダムには向かわず、六甲縦走路を行くと、約900段の急坂を経て菊水山です。
ここから登山口まで約1時間、
急坂登山道は人によって違うので30分~1時間。
山頂から北へ向かい、管理道路か山道を30分強下ると鈴蘭台駅です。
夢野の丘小学校を右に見て行くと、
メタボのお姐さんが、「何処見てんのよ!」と私を睨んでいた^^;
1987年石川隆作の「陽風」でした。
その先でコンサートの予定が掲示されていた。
来年3月までの事が書かれています。
熊野橋には新湊川まつりの横断幕が括り付けられていました。
湊川隧道から熊野橋までの新湊川で2年毎に開催され、今年で第6回になります。
演奏や各団体ごとの模擬店のほか、子ども達には、新湊川の水際に下りて、魚釣りや魚取りと盛りだくさんの企画があるそうです。
車道を渡り、東山商店街を南下します。
直ぐ右におやつ処があり、お彼岸なので、
これを三つ購入しました。
お墓用と仏壇用のお花を購入して湊川駅へ。
世界遺産となるにはスケールが小さいかも知れませんが、
神戸遺産としてはこれ以上のものが無い湊川隧道です。
近郊の方、無料公開される日にお立ち寄り頂ければと思います。
長文を最後までご覧頂き、ありがとうございました

この記事へのコメント
はるる
近くなら行ってみたいイベントです。
トンネル内の演奏、いい経験をされました。
アルクノ
予想していた以上に素晴らしいコンサートでした。
今迄行かなかったのが悔やまれますが、
これから何度も訪れる事になるかも知れません。
凡稔
コンサートは大きな筒(トンネル)の中でやっているので、確かに音の乱反射はなくて音響は良いでしょうね。
神戸にはいいところがいっぱいありますね。
アルクノ
何でも調べたい、との気持ちが先に立ちます。
地元の事であれば正しく伝えたいし、神戸の宣伝マンとしてお役に立ちたいと思っています
このトンネルがある事は知っていましたが、詳しくは知らなかったのです。
今回訪れて、興味津々で、調べるとへ~!へ~!の連続でした。
世界一ではなかったと思いますが、当時世界の代表選手になるような隧道だと思います。
今やトンネル技術は明石海峡大橋の橋梁技術と並んで世界一ですからね。
また神戸のいい所があれば紹介したいと思っています
てくてく
隧道内のコンサート、小編成の音楽向きの様で・・・反響音もあって、音よさそうですね。省エネ演奏向き・・・
演奏会+近代土木遺産・湊川隧道+東山の探訪、お疲れ様でした。
てくてく
アルクノ
私は、清盛と湊川との繋がり、
その旧湊川が新開地になった。
位しか知りませんでした。
湊川隧道って何?
新湊川はどうなっているの?
と思われる方への一発回答になればと思い、調べました。
隧道内のコンサートは、予想Guy!
の素晴らしいものでした。
スピーカー不要の省エネ+省資源、更に遺産の有効利用という、このトンネルを造った方が予想もしななかった事態になっています。
今後、トンネル内での演奏会&芸能&演舞が全国的に広まればいいなと思っています。
yoppy702
その時に、触れられていたコンサートの事ですか?
湊川隧道の事は、以前にチョコット調べましたが、こんなに詳しくは調べてませんでした。
さすが、アルクノさん。
「湊川隧道保存友の会HP」よりも、食いつきたい記事です。(^^)
役目を終えた湊川隧道であっても、湊川(古、旧、新)と共に歴史を物語る大切な遺産。
でも、単に遺産で終っているのでなく、新しい役目を担っているのが素晴らしいです。
湊川隧道に入った所は、後で作られた部分ですか!
そこが、明るい展示ルームのようになっているんですね。
そして、本来の湊川隧道に。
スゴイ!
先程の駅前の風景から考えれない世界。
異次元にタイムスリップしたかのようです。
そして、コンサート会場。
エエ雰囲気です。(^^)
それに、このコンサート、マイク、スピーカーなしですか。
完全なるアンプラグドですね。
横幅は、そんなにないでしょうから、音は、後ろへ届くのか?と心配になりますが、そうでもないんですね。
作りから、反響が心配でしたが、アルクノさんの記事によると、かえって、素晴らしい音響効果になっているのですね。
ひょっとしたら、教会のパイプオルガンのような感じかなぁ…
静かな演奏に適しているのかと思いきや、プログラムを見ると、ジャズやブラバンと書いてあるので、どんな音になるんやろ?と興味が湧きました。
オカリナは、幻想的になるかもしれませんね。(^^)
素晴らしい情報、ありがとうございました。
メタボのお姐さん、ホント、睨んでますね。^^;
アルクノ
てくてくさまの記事にあった湊川隧道で、その時調べたこのフルートコンサートに興味がありました。
電車で直ぐ行ける地元なので、何時か詳しく紹介したいと思っていて、はっきり言ってウズウズしていました^^)
湊川隧道とその関連+トンネル内コンサートの記事にすると、
「食いつきたい記事」になるのでは?
と目論みました^^)
次々調べるのは持病みたいなものです。
あまり関係の無い「峠の我が家」へ家宅侵入までしちゃいました^^;
この隧道でコンサートを行なうなんて、考え出した事自体が素晴らしです。
これは推察ですが、ソロだとあまり目立たない楽器を演奏してみて、その音響に驚いて採用したような気がしています。
隧道への連絡通路はあとで作られたもので、地下に向かってかなりの坂になっています。
隧道本体が明治時代に造られたことに驚きますね。
神戸で100年前の世界に入れるのはここ位でしょうから、価値あると思います。
このコンサートはアンプラグド!
米国の大物エリック・クラプトンがMTVに出演した際、電気楽器を使わない生音を CD化した『アンプラグド』がベストセラーとなり,1993年度のグラミー賞6部門も独占しちゃいました。
その事を知っているんですね。
ここでの名演奏をCD化すると売れるかも知れません。
教会のパイプオルガンのような響きには達していませんが、フルートの場合、各楽器の音がはっきり聴きとれると言う感じです。
これも楽器によって違うでしょうから、仰るようにジャズやオカリナなんて興味津々です。
楽器は違っても、この20列位までが良い響きなのだと思います。
メタボのお姐さんには以前にもお会いしているんですけど、
一瞬ドキッとしました^^)
yokkosan
タイトルはコンサートだけど、えっと?歩くコースの紹介だっけ?
いえいえやっぱりコンサートだわ~♪
アルクノさんのブログですものね♪♪
たまには耳元にキンキンに響く音も良いものだと思いますv
アルクノ
数分間、歩く道も紹介してみました
主人公は「湊川隧道」というトンネルでした。
コンサートは予想外の出来栄えで、今後各地でトンネルコンサートが開催されるかも知れません
ここでJazzなんか演奏すれば、キンキンギンギンギャンギャンと響くかも知れませんね。