昨年4月の「竹細工・福禄寿」以来、久し振りの手作りです。
竹は木製に比べ、軽くて丈夫なのが特徴です。
竹林や竹藪から切り取った状態だとずしりと重いが、
乾燥したものは、信じられないくらいに軽い!
と感じるはず。
以前、山歩きに持参し、仲間に持たせると
「軽~~い!」と言って驚いていた。
3年前、「杖の制作(2012.06.17)」を投稿しました↓
https://arukuno.seesaa.net/article/201206article_5.html
多くの方にご覧頂き、お礼申し上げます。
しかし、それは木製でした。
木製の場合、庭木の剪定で材料を得られる方もいると思います。
竹の場合は、素材のGetからして難しいかも知れません。
私は竹藪から調達していますが、
ホームセンター等にあるので、それらを利用されるといいかも。
このブログ読者の中には、竹の杖を望んでいる方もおられるでしょう。
アルクノにとって、木製より簡単に作れる竹の杖です。
制作は、実質2時間程度で終了しました。
簡単過ぎて投稿を躊躇したが、工夫を加えているのでご覧ください。
竹だと鋸で切断しただけで、とりあえずは使えます。
しかし、そのままだと、
尖った竹の繊維や節の出っ張った部分で皮膚に傷を付けるかも。
山用ストックのように、地面に突き刺す機能もありません。
安全に使えるようにし、少し工夫を加えた竹の杖にしました。
アルクノの場合、徒歩圏内に放置された竹藪があります。
歩き易いようにする為、道路を覆う竹をカットしたりしています。
なので、材料は簡単に手に入る訳です。
竹を材料に、容器等の実用品を作るようになったのは、それがきっかけでした。
前置きは終了して、以下本題です。
長さを決める
これより多少長くてもかまわないが、
竹を垂直に立て、腕をL字にして持った場合、
拳の上に数センチ出るぐらいが基本サイズです。
普通の鋸で切断し、地面に接する面は斜めにカットしています。
白黒にすると、昭和初期の趣です^^)
直径約3センチで、私に適した長さは107センチ。
この状態だと、問題点が四つあります。
問題 一
節から伸びる枝を切断して持ち帰ったが、尖っていて危険。
問題 二
鋸で切断すると、このように竹の繊維が捲れたりする。
硬くて鋭利なので、皮膚を突き刺す場合がある。
(経験者は語る^^;)
問題 三
同じ写真で、
節の部分も尖っており横にスライドすると皮膚が切れたりする。
(経験者は語る^^;)
問題 四
地面に突き刺す部分は、土が中に入ってきて取り出し難い。
その問題解決
問題 一
彫刻刀の丸曲(まるまげ)を用いる(幅は12mmで一般的なもの)。
丸曲:刃先は丸刀と同じだが、刀身を手前内側に曲げていて、へこんだ形に削れる。
表皮部分を削った後、出ている部分を少しずつ、こさぐように削っていく。
怪我防止の為、彫刻刀は手前から奥に向けて使用する。
削り終えた状態です。
問題 二
浮いている表皮は、摘んで引っ張るとこうなる。
キワ刀(切り出し)で表皮を剥いでいきます。
一周削りました。
この後、ザラザラな面を削り落とす。
これは左キワ刀ですが、どちらでも可。
問題 三
節の部分は、節に向かって削ります。
節から外に向かって削ると、全部剥がれてしまいます^^;
枝があった場所はへこんでいるので、丸曲を用いる。
次に、細かな凸凹を無くす為、キワ刀がベターだが、
カンナヤスリで削ってもOK。
この場合、横にスライドさせると繊維がめくれるので、節に向かって縦に往復運動を繰り返す。
他の節も同様にして削り落とす。
ここまでの削りカスは、これだけ。
説明が長い割に、大して作業していない事が判明した^^;
問題 四
枝の部分を削った箇所に、丸曲を深く差し込んで、
剥ぎ取ります。
内側が見えてきたところで、
キワ刀に持ち替え、
ギザギザが無くなるまで、スライドさせて削ります。
竹の内側に薄い膜があるが、耳かき等で擦ると簡単に取れます。
下にあるベビーオイル↓は後で使うものです。
先端部は、キワ刀とヤスリで削って滑らかにする。
山で使用中、土が溜まってきたら、足元に落ちている枯れ枝で取り出せると思います。
この部分を長くした理由↓
先端部がへたってきた場合、何度も削って尖らせると、
グリップ性が保持できます。
持ち手の部分も、角の面取りをして滑らかに。
仕上げ
1 オイルの塗布
削った所は乾燥が早く進んで歪み、ひび割れ発生の恐れがあります。
それを防止する為、ベビーオイルを塗ります。
掌に数滴たらし、握ってスライドすればOK。
ここまで2時間。
2 仕上げ削り
仕上げ削りを行うと、見栄えが良くなる。
キワ刀を用い、削った表面をスライドさせ、綿毛が出てくる程度に薄く削ります。
そうすると、肌触りがツルツルになり、艶が表面を覆うようになります。
上品な感じになり、持つ喜びを与えてくれるでしょう。
予想される質問についての解答
オイルの塗布は1回だけ?
塗布は適時行います。
オイルを内部まで沁み込ませて、水分を追い出す為です。
その作業は何時まで?
季節や気温による加湿や乾燥を繰り返す事により割れるので、何時までと決められるものでは無いのです。
塗装はしなくていい?
透明ニスなどで塗装すると乾燥を止めるので割れにくくなります。
反面、水分が抜けず、重い状態が維持されるという事になる。
しかし徐々に水分は抜けていくので、月日を得て軽くなっていきます。
過去に塗装した竹製のジョッキやカップ等、最近軽くなってきました。
油を塗布すると、塗料が乗りにくいので、どちらにするかを先に決めた方がいいです。
塗装した場合の問題点は?
飾りでは無く、アチラコチラでぶつかる事もある実用品です。
何れ塗装は剥がれ、斑になって、汚くなっていきます。
保管は?
温度や湿度変化の少ない日陰や納戸がベターです。
余談
尺八は、数年間かけ乾燥した竹を材料に作っています。
しかし、使用時は息を吹き込むので加湿している事になる。
その後、乾燥します。
これを繰り返していくと、
息を吹き込む歌口の部分から割れる場合があります。
そうならないように、
使用後は内部に布を通して水分を除去し、
適時、さらっとしたベビーオイルでマッサージをするのが良いとされます
(経験者は語る^^)。
以下、後書きです。
表面を全て削り取り、乾燥を早く進め、一気に軽くさせる事もできます。
以前は、この表皮を全て削り取っていた。
結果は、
半数近くの物が、乾燥が早すぎる事による歪で割れてしまいました。
更に、表皮全部を削り取った物は強度が低下してしまいます。
調べると
「表皮に近い繊維が密集した部分は、鉄の引張り強度(約35~40kg/㎟)に匹敵し、重量は鉄の約10分の1、アルミの約3分の1で、単位重量あたりの強度を比較すると鉄の5倍~10倍にもなる。」
とあります。
強度を保持する為、表皮を削る面積は最小限に抑えた方がいい訳です。
更に、節が増える程、曲げに対する強度が増します。
強度と削る手間を考え、この場合の節は三つ程度がいいように思います。
竹の種類と違いについて。
これは真竹(まだけ)です。
孟宗竹(もうそうちく)の場合、真竹より太くて肉厚もあり丈夫です。
しかし、重くなります。
破竹の場合は真竹より細いので、杖に適しているのかもしれません。
真竹だと根元を切断した後、数m先の部分を使用する事になる。
其々の外観の違いを知りたい方、↓を御覧下さい。
http://www.biwa.ne.jp/~h-kawara/page005.html
http://chitakan.com/renraku/110423mosochiku/index.html
現在では、整備した竹林より放置された竹藪が増え、
植物界の侵略者になっているそうです。
皆が利用すれば、その侵略を食い止める事ができます。
販売している「竹の杖」の注意点について。
以前、登山口で竹の杖を安価で販売していた事がありました。
見た所、安全に配慮した物ではなく、節の部分などゴルゴツしていて、
切り口も鋸で切っただけです。
持ち手の部分や触れる箇所は滑らかでないと、危険です。
節の部分を素手で力を入れて握った場合、
痛みを感じるような物だと実用的ではありません。
表面の滑らかさは、バランスを崩したときや転倒時で強く握る場合を考えると、とても重要な事です。
竹は成長が早く、1日で1mも伸びる場合があると聞きます。
ほぼ3年で成長を終え、樹木と比べて早々に利用が可能です。
ほったらかしの竹藪から材料を得て、
軽くて丈夫な竹の杖を作りましょう。
山用として作りましたが、
和傘を差して、足元の悪い道を歩く場合にも似合うと思います。
更に余談ですが、
熊が出てきた場合の武器としても使用できます。
常備している山用のストックとは、
比較にならない程の強度を持っています。
伸縮性が無いのが、難点のど飴^^)
本作品は実用新案登録などしていません^^)
自由に真似して頂いて、OK牧場!
追記)
工芸品の、竹材は油抜きをしてから加工をします。
沸騰した苛性ソーダ液に浸す湿式は家庭では無理で、台所のガスの火で炙る乾式が一般的です。
しかし、これも一般家庭では奥様に叱られます^^;
油抜きをした乾燥品は販売されているので、それを利用するのが手っ取り早いです。
今回は、面倒な油抜きをしていません。
ベビーオイルを塗布し、水分を追い出す事で防腐効果が期待されます。
節の部分から発生する多少のヒビ割れは実用上問題ありませんが、
気になる方には塗装する方をお勧めします。
長文を最後までご覧頂き、ありがとうございました

この記事へのコメント
凡稔
竹の杖は軽くて良いですね。作成の手順がよく分かりました。まっすぐの竹もいいですが、細竹の根元の節が密になっている部分を利用するといいですね。TV水戸黄門が持ち歩いている杖(仕込み杖?)のような竹は、なんという竹ですかね。
余談ですが、私の友人が炭焼きをやっていますが、その窯の上の天井らしきところに竹を置いてありましたが、薫製されて焦げ茶色で味のある竹になっていました。
行き当たりばったり
アルクノ
長い間待たせて、申し訳ないです。
3年前の木製の杖が予想を超えた人気になり、その続編をと考えていました。
見栄えはイマイチですが、実用性はかなり高いです。
>細竹の根元の節が密になっている部分を利用するといいですね。
私もそう思います。
それがなかなか無いんですよね。
水戸黄門が諸国漫遊に持ち歩いている杖はモウソウチクの突然変異で「亀甲竹(キッコウチク)」と言うものです。
亀甲竹で検索すると色々出てきますよ。
薫製されて焦げ茶色になった竹は味わいあるでしょうね。
因みに竹炭には脱臭効果もあって、水道水に暫らく入れておくと美味しい水になります。
私が一番欲しいのはハチクの栽培変種、黒竹です。
色がシックで、飾っておきたいくらいです。
アルクノ
持てる知識と、調べた事をギッシリ詰め込んでみました
尺八は練習をろくすっぽせず、歌口にヒビが入ってしまいました^^;
首振り3年迄やれば良かったです^^;
wako藤井
アルクノ
メタボ状態のその後の状況は、
お変わり無くでしょうか^^)
藤井さんがOB会参加の時期まで、山歩きなどして健康を維持していきたいと思っています
てくてく
されど、竹杖です。
てくてく
アルクノ
工芸品だなんてとんでもないですが、簡単に作れるのでお勧めです。
山田の里には似合うと思いますよ
私も自宅から水だけ持って歩く時は、
これにします
yoppy702
軽くて、衝撃吸収。それに、熊、撃退…
熊とは、遭遇したくないですが、最悪の事態では、何か防御しなきゃいけませんものね。
お遍路さんとか、金剛杖を持って歩いていらっしゃるので、竹の杖だと軽そうと思ったら、竹虎っていうメーカーが、遍路杖というネーミングで、竹製の杖を作ってるんですね。
まぁ、金剛杖を持つのは、別の意味があるので、あまり使わないとは思いますけど。(^^ゞ
杖の場合、太さがあるので、アルクノさんのイメージに合う素材って、スグに見つかるんですか?
まぁ、素材はお近くに沢山あるので探せば見つかるとは思いますが…
「切断しただけで、とりあえずは使える」…ボクの場合は、きっとこれです。(^^ゞ
でも、問題一から四を見ていると、ナルホドと思いました。
安全性とメンテの事を考えると、手間を掛ける必要があるわけですね。
その問題点に沿っての作業工程、作られる方には大いなる参考になると思います。
いつもの事ながら、感心しました。
「予想される質問についての解答」
何やら、メーカーのHPっぽくなりました。
中身を見ると、メーカーの内容でした。(^^)
さすが、アルクノさんです。
アルクノ
説明だけだと簡単に終わるので、尾ひれや飾りなど色々くっつけてみました^^)
作品としては、成程と思って頂ければ本望です。
同じ断面積であれば、棒よりパイプの方が強靭。
様々な構造体に使われていて、竹の応用と言えますね。
普段見ているのは風にそよぐ竹ですが、乾燥すると信じられない程強靭になります。
この杖も、私の怪力(?)をもってしても、びくともしません。
これで熊の頭を叩くとかなり痛がると思います。
竹虎っていうメーカー、覗いてみました。
青竹踏みだと、節の部分と角の面取りをグラインダーで削る→10分でできそう。
面白かったのは「竹の水割りセット」。
やはり内側まで塗装していました。そうしないと割れますからね。
塗装していないお猪口やカップは、湿度100%の冷蔵庫で保管とあります。
成程です。
遍路杖は2800円(税抜き)でした。
加工が殆ど無しの素材みたいで、この亀甲竹が竹藪にあればいいな~デス。
これは直径約3センチですが、この太さの竹はまず無いです。
直径10センチ程の根元を切った後、横倒しにし、5m以上程先の部分を適当な長さに切ります。
太い部分は竹細工用に持ち帰るか、小さく切って寝かせる事になります。
作業工程を分かり易くしてみましたが、こんなのでいいでしょうか。
今回は問題点がはっきりしており、対処法を示せばいいので楽でした。
「予想される質問についての解答」は、失敗者は語る、手口です^^。
メーカーさんも色々失敗して現在の姿があるのだと思います。
誰しも経験すれば分かってくることですが、知っている事でお役に立てればと思います。
あとはアイデアが欲しいですが、参考に竹虎さんをチョクチョク覗いてみます。
小枝
手前味噌になって恐縮ですが
竹から私は拙詩の鹿脅しを連想
更に
水上文学「越前竹人形」も
思いだされてきました。
映画での若尾文子さんの
艶やかな魅力忘れられません。
的違いのコメントになってしまい
どうもすみません<(_ _)>
アルクノ
竹は表皮が硬いので、力仕事のような趣です。
小学生の頃、図画工作の先生に褒められて育ちました。
それが飽きもせず、長々と継続しているのだと思います。
映画「越前竹人形」は1963年の公開ですね。
当時私は15歳で、父に連れられて見に行きました。
父が若尾文子さんのファンだったという事情があっての事です。
しかし父はその翌年に肝臓がんで他界し、思い出の作品になっています。
若尾文子さんのファンだったという想いは、
息子である私が引き継ぎ、現在に至っております。
とわ
竹の杖を作るというのは驚きました!
杖って買うものだとばかり^^;
木で作られた杖の記事も読ませて頂きましたが丁寧に作られていますね。
25本は凄いです。
竹を彫るのは結構、力がいるのですか?そそっかしい私は手を切ってしまいそうです。
アルクノ
私もこの地に引っ越すまでは、杖は買うものとばかり思っていました^^;
引っ越して十数年後、庭木のシラカシをを剪定するようになりました。
その真っ直ぐな枝を捨てるのが勿体なく思い、25本も杖を作ってしまうと言う事態に発展しました。
暇な時間を持て余していたのがその主たる原因です。
竹の表皮はかなり固いです。
削ると言うより裂く感じです。
竹細工部門のカップやジョッキではそれを彫ったりしているので、怪力のアルクノなればこそ
とわさんの身近にいる男性の方に、作って~と、お願いしてみてはどうでしょうか
降魔成道
アルクノ
竹で楽器をですか!
尺八は練習用で10万です。
本格的なものは何年もかけて乾燥するそうで、気が遠くなります。
小さな篠笛なら乾燥も簡単にできそうですよ。
頑張って下さい