https://arukuno.seesaa.net/article/201404article_3.html
2日目は下谷上農村歌舞伎舞台で11:00からの開演。
前置きは1日目にあるので、いきなり本題^^)
箕谷駅からが近いが、食料調達の為、谷上駅に3名が集合。
1日目は単独で、
2日目は滋賀からNさんと神鉄沿線からケンさんが参加してくれました。
徒歩15分ほどで会場に到着(10:26)。
最初曇天でしたが、予報通り昼頃にパラパラ、いったん止んだ後雨が強くなり、
最後の演目は見ずに退席しました。
澪つくし歌舞伎の舞台が紹介できない事態になりました。
お詫び申し上げます

前日は折りたたみ椅子で、本日はブルーシートが敷かれています。
全国からやってきたのか、ハッピを着た大勢の方が座っています。
なんとか、真中辺りに3名が座れました。
11時になり、
保存会理事長さんによる挨拶の後、
若い神戸市長の挨拶。
この舞台横にある山田中学の出身とかで、まるごと地元の方です。
農村歌舞伎にはこれからも力を入れていくと、心強いお言葉を頂きました。
以下演目の説明と演者の写真です。
1 「白波五人男」 体験教室修了生
今は亡き市川箱登羅師匠が大阪で講座を開いた時の修了生が演じます。
現在は片岡我當門下の役者さん達に指導を受けているそうです。
良く知られる白波五人男とは、
日本駄衛門をボスに、弁天小僧菊之輔、忠信利平、赤星十三郎、南郷力丸の五人の盗賊のことです。
追手に待ち伏せされ、もはやこれまでと覚悟を決め、
名乗りを上げてお縄を頂戴する場面です。
みっちり練習されたのしょう、難なくこなしていました。
上に紹介した名前の順に登場するが、その表情を捉えてみた。
トップバッターだけが男性でした。
最後の立ち廻りが見せ場だが、手順が不手際だったので非公開とします^^;
2 恋飛脚大和往来「新口(にのくち)村の場」 箱登羅たから歌舞伎
浄瑠璃:常磐津都代太夫 常磐津三之裕(三味線)
昨年10月の「仮名手本忠臣蔵~裏門の場」と同じ役者が演じます。
お軽寛平のお軽を演じていたゆきのさん(高校1年生)が孫右衛門役で登場。
高校生になると退団するのかと案じていましたが、胸をなでおろしました。
そのゆきのさんから暖かいコメントを頂いています。
ご覧になりたい方はどうぞ↓
https://arukuno.seesaa.net/article/201310article_5.html
この箱登羅たから歌舞伎、
小学1年生から20歳代までの9名が演じるとあります。
この演目に最大の紙面を割きますが、
その粗筋です。
大和の国、新口村の孫右衛門は、
息子忠兵衛を大阪の飛脚問屋へ養子に出していた。
その店の跡継ぎになるという真面目な忠兵衛だが、
訪れた遊郭で遊女の梅川に一目惚れ。
一途な想いは梅川に通じ、幸か不幸か抜き差しならぬ恋仲となる。
そして、
この梅川を身請けするという男が忠兵衛の前に現れ、
たまらず、懐にあった客からの預り金、
十両を使って、大好きな梅川を身請けする事態に!
二度と会えなくなるなんて、忠兵衛には想像もできない事でした。
真面目に働いて、お金をためて、身請けして夫婦に。
と思っていたでしょうに。
世間はそれを待ってはくれませんでした。
心中、察するものがあります。
が、
江戸時代、十両を盗めば死罪との定めです。
養い親の元へ帰ることも出来ず、落ち延びるしかありません。
梅川も共に死ぬる覚悟で、大阪から落ちていく。
死ぬ前にせめて一目、
と実の親が住む新口へ向かいます。
花道から梅川・忠兵衛が登場し、舞台が始まる。
姉妹が演じています。
梅川は、お姉さんのひとみさんで年齢不詳。
忠兵衛演ずるは妹のあゆみちゃんで、中学三年生。
ひとみさんは仮名手本忠臣蔵でお軽に横恋慕する鷺坂伴内(さぎさかばんない)を演じていたが、様変わりの美しさです。
(写真は、一旦プリントして背景をハサミで切り取り、スキャナーで読み取ったもの。)
忠三郎の家内おしんが登場し、忠兵衛が訪ねている孫右衛門を探しに向かう。
(その場面は割愛して、)
梅川と忠兵衛の絵になるショットです。
道ずれにする梅川にすまない想いの忠兵衛と、
もう死んでもいい、と覚悟を決めた梅川です。
梅川も夫となる忠兵衛の親孫右衛門に一目会いたいと思っています。
そこへ孫右衛門がやってくる。
忠兵衛を後ろの戸に隠すと、
孫右衛門が目の前でよろけて、鼻緒が外れる。
梅川が身を案じ、駆け寄って、対処する。
鼻緒を直し、ここへ来た理由を、その身を明かさずに切々と述べます。
孫右衛門は、このように親切にしてくれたことで、もしや・・
と心に過(よぎ)るものがあったはず。
この孫右衛門を演ずるのがゆきのさんです。
可愛さを何処かへ押しやって、父親を見事に演じ切っていた。
息子がえらいことをしでかした為、養い親は捕えられたことを話す。
自首して欲しいが、捕まると死罪であることを無念の想いで吐露する。
それを後ろで聞いている忠兵衛だが、
ここで出ようか、どうしようかと思案の様子。
親切にして貰ったこと、このご婦人が困っている様子を察し、
金子を(梅川に)渡す。
落ち延びる資金として渡したのです。
孫右衛門は気配で息子が後ろに居ることを感じ取るが、
会いたい気持ちと、会わない方がいいとの想いが相半ばする。
その気持ちを察した梅川が、父親に目隠しをして会わせる。
涙溢れるシーンです。
私もウルウルになりました。
そこで、梅川が巻いていた布を外す。
もう涙、涙・・
今生の別れとなるのです。
悪事を働いた悪い息子と思っていたが、
この心優しい梅川に会って、息子の想いの全てを知った父親です。
梅川と忠兵衛は花道を去るが、
残った父親の孫右衛門は泣き崩れる。
そこで幕引き。
皆さん立派な役者さんで、感服しました。
私の横に座っておられた、長野から来たと言う歌舞伎役者さんは、巧い、巧いと絶賛していましたよ。
ゆきのさんは、声を変え、所作を男っぽくして、父親を見事に演じていました。
あゆみちゃんは、切ない男の気持ちが分かるのでしょうか、
表情による演技が素晴らしかった。
ひとみさんは、昨日の演目「寿 鳴る神」の宮中一の美女、
雲絶間姫(くものたえまひめ)の演者として推薦したいです。
女性としての心遣いや美しさが、演技の中で光っていました。
最後に、プロの浄瑠璃の方も盛り上げる雰囲気作りに重要な役割を果たしてくれました。
ありがとうございました。
ここで休憩と昼食。
お弁当を食べる時に、ケンさん持参のブレンドウィスキーをお湯割りで頂きました。
Nさんからはおつまみも。
次回の第24回全国地芝居サミットの案内です。
新潟の魚沼で、今年11月29日と30日に開催されるそうです。
会場は魚沼市小出郷文化会館。
雨がパラついた後、日が射し込み、
幕が開く。
3 「寿 式 三番叟」 南光子ども歌舞伎クラブ
兵庫県佐用郡佐用町三河からの参加です。
この舞台もそうだが、三河には国指定重要有形民俗文化財の「上三河の舞台」があるそうです。
平成4年に、隣接する三河小学校児童による子ども歌舞伎クラブが結成され、
以後、播州歌舞伎の伝統を受け継ぐ指導者の教えを受け、
年3回程度の発表を行いながら今日に至るそうです。
三番叟は能の「翁」を歌舞伎化したもので、
ご祝儀ものとして演じられるめでたい演目です。
演ずるは全員小学生。
まずは口上
この男の子が狂言で脇へ回ります。
厳かに舞う6名はプログラムの名前を見ると全員女の子みたいです。
4 伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)「古市油屋の場」
神戸すずらん歌舞伎
医師・孫福斎(まごふくいつき)が酒に酔って、仲居をはじめ数人を殺傷したという事件があり、それを元にして書かれた。
検索すると出てくるが「油屋騒動」として有名です。
日本三大遊郭の一つといわれた伊勢古市での殺傷事件で、
寛政8年5月4日(1796年)夜に発生した。
この物語に出てくる遊女のお紺は実在の女性で、
難を逃れたそのお紺見たさに油屋は大繁盛したと言う。
物語のポイント。
お紺に惚れた主人公という設定を軸にしています。
刃傷沙汰になった名刀(青江下坂)は、福岡貢(主人公で伊勢の神官)の祖父が無念の思いで切腹の際に使われたものとしている。
その刀には妖気が潜んでいる、としたのでしょう。
また、その名刀の鑑定書(折紙)だけを持つ商人が横取りしようと狙っていて、金の亡者で腹黒い仲居(万野)が策略に加担します。
更に、貢がお紺に会う為の資金調達に横恋慕を混ぜ、貢が立腹する方向に持って行く。
これらが複雑に絡み合って舞台が展開します。
万次郎は貢のもと主家で、主家の為に名刀の青江下坂とその折紙(鑑定書)を探していた。
やっと探し当てた下坂を万次郎に渡すべく、油屋へやってくる所から話が始まる。
万次郎は出た後で、帰ってくるかもしれず、暫くここで待つことになる。
仲居の万野にお紺に会わせろと言うが、意地の悪い万野は別の遊女をあてがう。
上がると刀を預けなければならず、もと家来筋の料理人喜助に手渡す。
それを知った(侍徳島岩次に扮した)悪徳商人藍玉屋北六は自分の鈍刀(なまくら)と挿げ替える、
しかし、それを見ていた喜助は、もと通りに差し替える。
座敷が終わって、降りてきた貢の前に器量の良くない遊女お鹿が現れる。
右は貢の惚れているお紺。
お鹿は「都合十両を貸しているが、何時返してくれるの?」とのたまう。
身に覚えのない貢はその証文を見せろと言う。
実は
貢はお紺に会う為、仲居の万野に金を無心していた。
策略家の万野は、貢からと称して偽の恋文を書き、金を借りたい事を書き加えて、貢に片思いのお鹿に渡していたのです。
万野が、その金を貢に与えたという事でした。
それを何度も繰り返して。
全てを暴露された貢は立つ瀬がない。
お紺は「恥ずかしい~、あ~嫌だ」と顔を隠しています。
御立腹の貢は、
喜助から刀を受け取って油屋をあとにする。
残る刀が偽物であることを知った万野は、本物は油屋にあると貢に(嘘を)言う為に走って連れ戻す。
慌てて戻ってきた貢。
刀を返せと叫ぶ。
イラつく貢は、追っかけ戻った万野を腹だたしいと切りつける。
狂った貢は、お鹿にも刀を振り下ろす。
邪魔者、悪徳商人と
お紺に横恋慕する阿波の悪臣にも切りつける。
正に地獄絵図です。
全ては、この刀の妖気が仕向けた災いでしょうか。
最後の場面。
手に持つのは下坂です、と喜助が言う。
折紙もここにあります、とお紺に知らされ、
茫然と立ち尽くす貢。
演者が揃って挨拶です。
お疲れ様でした。
農村歌舞伎を堪能しました。
江戸の時代より庶民に親しまれてきた、この歌舞伎です。
2日間を通して、可愛さ、ドタバタ、笑い、涙と哀れ、
まるで人生の縮図のような舞台でした。
また機会があれば紹介したいと思っています。
長文を最後までご覧頂きありがとうございました

この記事へのコメント
ケン
子供達が一生懸命に台詞を覚え、まじめに演技をするのを観て、感心するのみでした。
来年も、観たいです。
アルクノ
2日間観劇して皆良かったですが、この記事で多くのスペースを割いた「新口村の場」が一番素晴らしかったです。
このようにバラエティーに富んでいて見応えのある農村歌舞伎です。
またご一緒しましょう。
羅輝
お互い頑張りたいですね。
アルクノ
記事を拝見すると、教育や能力開発にご尽力されているんですね。
頑張ってください。
私は週1回の更新目指して・・、
遊んでいます
てくてく
感じでは、2日目の方が内容が濃い様に思いました。
2日間にわたり、座り通しの舞台鑑賞と、編集ブログアップお疲れ様でした。
おひとりで・・・
てくてく
yoppy702
1日目の記事にも、「マイッタ!」でしたけど、2日目は、それ以上。
コメ返の最後の部分で、もしや…とは思いましたが、これ程とは…
JAZZ解説しかり、きっと、こういう関係のお仕事をやられてても大成されたでしょうね。
「2 恋飛脚…」
さすがに力作で、言葉にならない程、感動しました。
勿論、ボクは、この粗筋を知りません。
でも…引き込まれてしまいました。
梅川が、父親に目隠しをして忠兵衛に会わせるくだりには、涙が溢れました。
アルクノさんの文だけでウルウルしてきたのに、写真をクリックしたら、ボロボロッと流れてしまいましたよ。
そして、梅川が目隠しを外す。
抱きしめる父親…
ここでも、写真が、気持ちを、さらに高揚させます。
この写真のカットだけで、孫右衛門、忠兵衛、梅川のお互いを思いやる心に完全に打たれました。
この手の込んだ画像も素晴らしいですね!
この章の一枚目を見た時に、「エッ?」と思いました。
三次元画像になってますもん。
スグに種明かしをして頂きましたけど…
よく、こんな事を思いつきましたね。
一枚目もステキですが、花道を去るカットの梅川の眼差しがとてもイイです。
アルクノさんが、雲絶間姫に推薦したくなるのが解ります。
ゆきのさんのコメントは見ていなかったので、見てきました。
ブロガー冥利につきますね。
こんなコメントを頂いたら、アルクノさんでなくても、ゆきのさんのファンになってしまいますよ。(^^)
「4 伊勢音頭…」
この解説と写真も、シーンを巡らせるのには十分過ぎました。
ボクも、農村歌舞伎、堪能しました。(^^)
ありがとうございました。
アルクノ
雰囲気を出すために、言葉遣いには心を込めたつもりですが、なんとか演者の熱演振りが表現できたでしょうか。
仰るように2日目の方が熱くて盛り上がる、内容の濃い演技でした。
ハイ、なんとか書き上げることが出来たので、
一人でします。
アルjクノ
種明かしをすると、アルクノは若い頃に作家を目指していました。
言葉知らずで世間知らずの輩には、実際のところ何もつくり出すことはできませんでした。
でも、想いは少し残っているので、
このような記事やレポートに気持ちを注ぎ込もうと思っています。
褒めて頂くと、励みになります。
梅川、孫右衛門、忠兵衛の心が伝わるように表現したくて、写真選びや文章は熟慮しました。
書き過ぎてもいけないし、言葉を選んで分かりやすくしなければと思いました。
ここに一番神経を使ったので、感動して頂いて嬉いです。
背景を切り取った写真は、最近購入したスキャナー付きのプリンターを活用しました。
(以前の物はXP用でそれが出来なかった)
花道を撮ると一般の方が写り込み、雰囲気にそぐわないことになります。
梅川・忠兵衛だけが欲しかったのです。
私は、梅川を演じるひとみさんの眼差しと、その女性らしさに引き込まれてしまいました。
そのひとみさんを雲絶間姫に推薦しましたが、よくよく考えてみると、下心満載の鳴る神上人に触られてしまいます^^)
私が脚本を書き換えます^^)
ゆきのさんと、ひとみさん姉妹がこれをご覧になってくれれば嬉しいですね。
伊勢音頭…は、人の淀んだ心を描いていますが、これも歌舞伎でして、
戒めとして、こうならないように気を付けよう、との気持ちで書き上げたのではと思います。
写真と解説がマッチしていましたか、ありがとうございます。
yoppyさんを農村歌舞伎ファンに引き込むことに成功しました
これを読んで頂いて、一人でもファンが増えれば役者さん達も喜ぶと思います。
私に、そのお手伝いができればと思っています。
凡稔
アルクノ
解説がプロ級だなんてとんでもないです。
花や建物、或いは凡稔さんが作られる人形の場合は、写真を見ただけでその良さが分かりますよね。
芝居の場合はそう言う訳にいかないので、「なんとかこの物語を伝えたい」との気持ちがありました。
その、何とか・・という気持ちが、筆を運んだのだと思います。
私なんかより、演者の方達が凄いです。
仰るように拍手、拍手で、裏方さんにもです。
そうして作られた舞台が感動を生むのだと思います。
私が感動した所で、同じような気持ちになって頂いて、嬉しいです。
もし、自分の息子が忠兵衛と同じ状況になれば、
と思うと孫右衛門の気持ちが良く分かりますよね。
ブログの製本などは考えていないのですが、私が生存中は(死後は分らないので^^)何度でも、自由にご覧頂くことが出来ますよ。