4月19~20日の二日間にわたって開催される農村歌舞伎の1日目で、
上谷上農村歌舞伎舞台で上演されました。
農村歌舞伎について。
簡単に言うと、農閑期に農村地域で楽しまれた芝居で、地元住民が演じる手作り芝居でした。
都市化された現在では、保存会や芝居が好きな方達によって運営され、行政の支援もあるようです。
神戸市北区にはその農村歌舞伎舞台が数多く現存していますが、肝心の芝居は長い間途絶えていました。
平成2年頃から復活し、平成12年からは4か所の舞台を用い、毎年ローテーションで農村歌舞伎が上演されています。
そしてやっと、
我が町、神戸市北区で「全国地芝居サミット」が開催される運びとなりました。
全国を回っている人情芝居の公演などでは無く、その土地で親しまれている農村歌舞伎の上演会で、殆どアマチュアさん達が演じます。
それが神戸で開催されることになったのです。
全国各地から多くの関係者が観客として駆けつけ、その方達との触れ合いもありました。
19日は谷上駅から徒歩15分の
「上谷上農村歌舞伎舞台」で13:00から15:30
20日は箕谷駅から徒歩数分の
「下谷上農村歌舞伎舞台」で11:00から15:30
の予定で開催されます。
今回このレポートをすることになったのは、
昨年の「木津の神社で農村歌舞伎(2013.10.19・土)」
https://arukuno.seesaa.net/article/201310article_5.html
を観劇したことがきっかけでした。
その時、
この世話約をされている加藤直子さんによるスピーチで知らされたのです。
上記URLをクリックしてご覧頂くと、この農村歌舞伎のことが立体的にご理解頂けるものと思います。
その記事と重複する部分もあるかと思いますが。
雨が心配でしたが、19日は観劇には絶好の、いいお天気になりました。
谷上駅で下車し、駅スーパーで弁当を購入したアルクノ一人が、上谷上農村歌舞伎舞台に向かいます。
駅を出ると、この幟が立っているので、
場所が分からなくても大丈夫です。
北へ向かって2~3分、JA兵庫六甲の先で信号渡り、坂を上ります。
角毎に係りの方が居て、幟もあり、
ゆるやかな坂を上がるとすんなり到着(12:06)。
既にかなりの観客がいます。
確保できたのは折りたたみ椅子が並ぶ、前から3列目で、頑張って撮影しました。
(舞台は全て撮影OKとの案内があったので、無修正での公開となります。)
午後1時からなので、座席で昼食をとって準備を整えます。
私の隣に座られたのが、20日に演じられる南光子ども歌舞伎クラブの関係者の方で、名刺も頂きました。
兵庫県佐用郡佐用町から来られたそうで、私より立派な髭を蓄えておられ、色々なお話を伺いました。
この上谷上農村歌舞伎舞台は文久3年(1863年)の建立。
普段は舞台下手寄りの所が切れて参道になっています。
参道が向かうのは上谷上の鎮守である天満神社で、この舞台と向き合っている訳です。
この歌舞伎が無事に執り行えるようにとの願いを込め、宮司さんによる神事が始まりました。
お払いの後、祝詞(のりと)をあげて終了。
開会前に、舞台保存会の方の説明があり、
この地芝居サミット実行委員長の神戸市北区長高武秀年様がご挨拶。
最初の演目が始まったのは13:20頃です。
1 「子宝童謡夢物語」 甲緑子たから歌舞伎
小学生を中心に、ヨチヨチ歩きの3歳児までが参加しての演技です。
白波5人男を下敷きに、子供たちのヒーローが実在とフィクション織り交ぜて登場します。
これは、この地域の農村歌舞伎の指導者で、今は亡き市川箱登羅氏が書き上げた子供用歌舞伎です。
盗む、殺すなどのセリフがあって、刺激的な白波5人男を子供向けにアレンジしたものです。
箱登羅先生没後3年を得て復活しました。
クリクリおメメの牛若丸ちゃん、
桃太郎ちゃんが口上述べているのに、
よそ見をしたりして、いけませんヨ^^)
全員揃った処で紹介ですが、金太郎が二人もいたとは知りませんでした。
その右に、桃太郎、浦島太郎、牛若丸、鬼若丸(弁慶の幼少期)で、全員女の子でした。
牛若丸の見えを切る姿はかっこいい。
金太郎の補助をしている黒子(ママ?)さんも可愛いです^^)
おひねりが沢山飛んできて大変ですが、
良くできました

イナバウアーの披露までありがとうございました。
これをやると、拍手が貰えることを知っているようです。
3歳から歌舞伎を習ってきた男子高校生に手ほどきを受けたそうで、甲緑子たから歌舞伎の卒業生が指導者となって頑張っているのです。
最後に「上を向いて歩こう」を合唱して退場しました。
2 「岩清水正八幡大明神の舞(宿神)」 尾八重(おはえ)神楽保存会
宮崎県は西都市大字尾八重の、標高500~800mの山地からやってきた。
とあります。
住宅と小学校、郵便局まである六甲山とよく似た土地柄なのかもしれません。
そこに、京都の岩清水八幡宮から氏神として勧請した壱岐宇多守という山岳法者が住んでいた。
自ら修験者となり、籠堂を建てて神楽伝習所を起こし、神楽の普及を始めました。
以来893年が経過し、歴史ある舞となったそうです。
露払い(神主二人)を従え、神屋(神庭)に出現し、鬼神の舞を厳かに舞います。
3 「寿 鳴る神」 はことら座
市川箱登羅氏は「神戸すずらん歌舞伎」「澪つくし歌舞伎」「新尼崎歌舞伎」を指導していました。
師匠の没後、これら団体の有志が集まって「はことら座」が結成されたそうです。
その「はことら座」による、少し色っぽ~いお話の粗筋。
帝(天皇)が約束を守らず、位を授けてくれないことに憤慨した鳴る神上人は、行(しかけ&魔法?)を用いて世界の竜神を北山(京都)の滝壺に閉じ込めてしまう。
その為、雨が降らなくなって大干ばつ。
結果、農民は困った事態に。
そこで一計を案じた帝は、
宮中一の美女、雲絶間姫(くものたえまひめ)を鳴る神上人の元へつかわします。
色仕掛けでたぶらかし、酒攻めで酔い潰し、その隙に竜神を解き放つ、と云う作戦です。
さて、如何相成りますか。
雲絶間姫(演者は男性)の登場。
夫が死んで七七日であることを切々と話す。
四十九日を終えた未亡人は、男性にとって魅力ある存在だそうです。
世を儚み、この滝壺に身を投げようかと、その想いを吐露するが、上人に止められ出家を勧められる。
実はこれが上人の策略で、
托鉢の用意をするためと称し、小坊主を外へ追いやる作戦でした。
色仕掛けと、下心の、
ガチンコ対決です^^)
(色っぽい台詞は自主規制でカット!)
ややあって、何故か酒が用意され、二人だけの目出度い儀式が始まる。
酒に強い姫は一気に飲み干し、
返杯する。
酒にはめっぽう弱くて、奈良漬けも大嫌いと言う上人だが、
イヤイヤながら飲み干す。
その結果、体が熱くなったり、悪寒が走ったりの変調をきたす。
二杯目は無理~、と断るが、
「飲まなきゃ結婚しない」とダダをこねる姫の為に飲み干すことになる。
もうヘロヘロだが酒の味を知ったことで、更に三杯目!
このあと、ひっくり返る。
まんまと策に乗せられた、鳴る神上人。
策略通りとなって、姫は岩をよじ登り、
必死の思いで、
竜神を閉じ込めていた注連縄を断ち切る。
すると、解き放たれた竜神が滝を登って行きます。
そのあと、雷鳴が轟き、
雨が降り続けて、大成功を収める。
事の次第を知り、烈火のごとく怒り狂う、鳴る神上人。
ポールダンスでも踊りそうな雰囲気です^^)
小坊主を蹴り倒して、花道を去っていきます。
出演者一同の挨拶。
お疲れさまでした。
とても、面白かったです。
幕間のアトラクションで、床几(しょうぎ)回し。
夕涼みの縁台などに使われる床几を 田の字型に4台繋ぎ、下に取り付けた駒で回すと言うものです。
これは、円形に切り込みを入れ、舞台下でろくろの様に回転させる、回り舞台の前身として残っています。
大変貴重なものだとか。
2回もグルグル回されて、役者さん大丈夫でしたか?
4 「詩吟と空手を交えた実演」 谷上ゆうゆうクラブ
地元において、スポーツや芸能、語学など様々な活動を行っている団体です。
今回は14名で活動している詩吟クラブと、
沖縄少林寺空手研究会の皆さんが登場。
詩吟をバックに空手の型を披露します。
本日は此れにてお開き。
20日がまた楽しみです。
最後までご覧頂き、ありがとうございました

この記事へのコメント
yoppy702
やっぱり、アルクノさんの解説は、ピカ一ですね。
写真と解説で、観ているような感覚になりました。
「農村歌舞伎」というのを知ったのは、アルクノさんの記事が初めてでした。
谷上駅、箕谷駅の近くといえば、アルクノさんの地元?
アルクノさんと農村歌舞伎の出会いには、宿命のようなものを感じました。
北区長が実行委員長で、挨拶に来られるなんて、行政も力を入れられているんですね。
3歳のお子様まで演じてるなんて、まるで学芸会。(^^)
でも、写真を見ると、見えを切ってる姿は、学芸会じゃないですね。
確かにカッコイイです。
おひねりも飛んでくるんですね。
読んでいて引きつけられたのが、「寿 鳴る神」。
前説があって、「さて、如何相成りますか。」
なんて、ウマイ、ウマイ。
「四十九日を終えた未亡人は、男性にとって魅力ある存在」
確かに。というか、喪服の女性には惹かれますね。
ちょっと脱線しました。(^^ゞ
上人と雲絶間姫の策略合戦。
見応えがあります。
このカットのアルクノさんの解説がとてもナイスです。
竜神の滝のぼり…
雷鳴の轟き…
上手く表現してますねぇ。
形相が急変した神上人もスゴイ。
ホント、お疲れ様でした。
とても、面白かったです。(^^)
アルクノ
以前書いたかもですが、この農村歌舞伎に出会ったのは数年前、神鉄ハイクに参加したときでした。
ゴールが歌舞伎舞台で、背の高い外人さんが白波五人男に扮し、面白い口上で笑わせてくれました。
それと、子供達の素晴らしい演技にはウルウルになってしまいました。
神戸の新開地には大衆演劇の芝居小屋があり、それで下地ができていた、という事もあります。
このレポートを褒めて貰って恐縮しますが、張り合いが出ます
歌舞伎舞台は家から徒歩圏内ですが、このときは電車を利用しました。
区長のみならず、神戸市長も力を入れている農村歌舞伎です。
20日は市長の挨拶がありました。
小学生たちは学芸会の延長ですが、綺麗な衣装で気合が入っています。
恥ずかしい感情が芽生える以前に舞台に立たせ、演者を養成しているのだと思います。
この中から、また指導者が生まれるかも知れません。
おひねりは、スタッフが前の方に座っている人に配っているんです。
飴玉が入ってます^^)
鳴る神上人のお話は、偉い人も我々と同じ生臭い面を持つ人間だ。
それが言いたかったのかも知れませんね。
台詞はメモらず、写真を見ながら、本筋から外れないようにと解説してみました。
この舞台設定や小道具も少ない予算で頑張っています^^)
色恋が入ったドタバタ劇と、
お涙チョウダイの人情話。
これが大きな2本柱ですね。
これから、20日撮影の写真整理と執筆を開始します。
演目が多く筋書きを分かり易くしようとすると、一つに収まらないので、どうしようかと思案しています
凡稔
それがあっても愛嬌愛嬌ですが。
アルクノ
「寿 鳴る神」は初めて観ましたが、面白かったです。
話は大人向けですが、ドタバタがあって舞台も工夫が見られ、子供にも楽しめる内容でした。
幼児たちは可愛いだけでOKです^^)
おひねりに手を出す役者ちゃんは居ませんでしたが、演技終了後、箱に入ったお菓子を貰って喜んでいました
てくてく
寿 鳴る神、要所要所を押さえて、うまく編集されているので、ビデオよりも良く判ります。
チビッ子の見栄も可愛いし。
でも、長時間座ったままで、大変でしたね。お疲れ様でした。
てくてく
アルクノ
もうこの農村歌舞伎に、はまっています。
台詞を仔細に書く訳にいかないので、情景描写には工夫してみました。
褒めて頂いて恐縮します。
チビッコちゃんには、可愛い、可愛い、との「おひねり」が飛び交っていましたよ。
私「アルクノ」には、長時間のお座りが大変です
花咲か爺
熱演される演者の方も次世代への継承など
色々有るでしょうが、やはり子供歌舞伎には
可愛さで「大人顔負け」?人気をさらわれそうですね。
アrクノ
仰るように、歴史あるこの農村歌舞伎を継承していくのが大変で、ヨチヨチ歩きのお子達まで頑張っているのです^^)
ほんと、可愛い子達が演じてくれました。
演技、可愛さ、面白さ、満載の農村歌舞伎です。
私達観客も引き継いでいかねば、と思っています。
かっぱちゃん
地域の人たちで担ってきた文化が、地域の人たちによりずっとその歴史が刻まれていくのはすばらしいことです。こういった文化があると、その地域をみんなで大切にしようと思う気持ちも強くなりますね(*^^*)演じる人たちも応援して観る人たちも素敵です♪
アルクノ
神戸では平成の初めに復活し、全国的には第23回という事で歴史を刻みつつあります。
江戸時代から絶えることなく続いている地域があるのは、凄いことですね。
観客あっての舞台なので、これからも地元開催時には駆けつけ、このようにブログで応援し続けたいと思っています。
このサミット開催地は全国規模でまわっています。
何時かかっぱちゃんの地域にも行くかもしれないので、その時は宜しくお願いしますね♪
笑ったり、涙したりで、
大変なことになりますが^^)