私が日頃山歩きに持って行くストックは登山用品店で購入したものではなく、自作の木製で「杖」と言っても差し支えないものです。
長時間電車移動する場合は面倒なので持って行きませんが・・。
今回はその杖の制作過程をお見せします。
その自作の杖は2本や3本ではなく一生かかっても使い切れないくらいのストック(笑)があります。
数えてみると25本!
この殆んどは庭に植えているシラカシ2本を剪定して得た枝を材料にして作ったものです。
山からのお持ち帰りで作ったのもありますが。
樹皮を剥ぐところから、乾燥時のひび割れの補修、更に塗装までを順次説明していきます。
1.樹皮を落として乾燥まで
多少曲がっていても良いが、使えそうな枝を選びます。
小枝を切り落とし、その日のうちに樹皮を剥ぎます。
削るというよりサクサクと剥ぎ取る感じで、20分弱で丸裸になりました^^)
生木は柔らかいので簡単に削れるが、乾燥するとこうはいきません。
握ると、ジトッと濡れている感じですが、クラフトナイフで凸凹部分を削ります。
ここまで37分。
次にカンナヤスリで目立った凸凹を無くします。
仕上げでは無いので適当でOK、この場合は所要13分。
この後、直ちにニス塗りをする。
使ったのは百均で買った透明ニス。
染み込みが早いので、3回行なう。
ゆっくり乾燥させ割れにくいようにする為ですが、ここまで1日でやってしまう。
2.ひび割れの補修と仕上げ
その5日後、ちょっと早いがニスを削り取って、仕上げに向かう。
乾燥すると木は硬くなるので、時間がかかります。
通常は風を通さない納戸で時間をかけて乾燥させるが、今回は日当たりの良い玄関先だったので少しひび割れが発生。
太くても細くても切り口付近から割れます。
木工ボンドを割れ部分に注入し、
余分なものは紙でふき取る。
ボンドが粘土状に固まってきたら爪で押し込み、隙間にとの粉を擦り込む。
ヤスリがけした時に出てくる木粉でもOK.
との粉を固まらせるため、ニスを染み込ませる。
筆の穂先に液を付けて、乗せるようにすれば自然と染み込む。
ベタッと塗ってしまうと、との粉が剥がれ落ちます。
木の毛羽立ちや細く出ている繊維を落とす為、カンナヤスリで円を描くようにこすっていく。
3.塗装
塗装しなくても使えるが使っていくうちに手垢や泥で汚れてしまうので、塗装した方がいいと思います。
着色ニスでもOKだが、今回は着色と上塗りの2行程にします。
着色は顔料系の水性オイルステインで色はオールナット。
3回塗り重ねてしっかり着色させる。
毛羽立ちがあればサンドペーパーで落とし、剥げた所は塗り重ねる。
これは水性絵の具のようなものなので、保護の為の塗装が必要です。
上塗りは艶出しも兼ねて、透明漆を使用する。
(本漆ではなく、ホームセンターで購入した合成漆です。)
薄め液(シンナー)で2~3倍に薄め、幅3センチ程度の固めの刷毛で撫ぜるように塗装します。
乾燥後、目の細かいペーパーか硬い布でざらつき感を取り除いておく。
更に塗り重ね、3回塗装して終了です。
漆の重ね塗りは充分乾かせてから行ないます。
乾燥が不十分なうちに塗り重ねると、下の塗膜がシンナーで溶けて汚くなります。
完成しました。
ゴルフクラブのウッドのようですね^^)
持ち手部分が前傾しているので持ちやすく、また湾曲している事で強く地面を突いたときにショックを吸収してくれるのでは、と思います。
補修した部分のズームアップです。
上の写真と見比べると、目立たなくなっている事が分かると思います。
この補修はあくまでも補修と言う事で補強の効果はありません。
ひび割れが酷い場合はその部分を切り落とさないといけません。
木の太さが違うが、樹皮を剥いだ後そのまま放置しておくとこのようになります。
これで、乾燥をゆっくりさせなければならない事が分かります。
今回のように塗装を2行程にした場合の利点です。
着色ニスを使用すると一行程で済むが、剥がれた場合下地が露出します。
今回の場合下地がしっかり着色してあるので、漆の塗膜が使用中に剥がれたとしてもあまり目立たないと言う事です。
最後に、他の自作した杖もまとめて公開します。
5以外は自宅シラカシの木です。
1は上が切れているが約145センチある長いものです。
2が良く使う杖ですが、地面に接する部分で塗膜が剥がれています。
これが、今回の下塗りをすればいいのではと思ったきっかけです。
3は今回のものと合わせて作ったもので、グリップ部分が今回同様前傾していて使いやすいのではと思います。
少し長いようなので、実際使用してみて、下をカットします。
4はグリップ部分が尖っていて、猪が出るような所へ出かけるときに持って行き、いざと言うとき逆さに持って戦う事を想定しています。
使用実績はありませんが・・。
5は山から持ち帰ったものです。樹皮を剥ぐとひび割れや虫食い跡が一切無く、緩やかなウェーブが蛇のようなので気に入っています。
そのウェーブが巧く撮れていないので、翌日(今朝)に再度撮影しました。
尻尾になる下の部分をもっと細くして蛇らしくしていきたいと思います。
ただ重過ぎるので実用性はありません。
6が今回作ったものですが、こうして見るとチョコレートのようで美味しそうです

7は150センチ程ありグリップ部分がこの杖の重心になるので、振り子のように使えていいのではと思ったが、まだ予備として保管している状態です。
8も湾曲部分がクッションになります。
9はグリップから下は真っ直ぐ太い状態なので、かなりの強度があります。
10は突起部分が滑り止めになっていいのではと思うが、赤の漆塗りが派手過ぎるので使っていません。
塗装のやり直しが必要です。
11は腰が曲ってヨタヨタ歩きになったときに使う杖です^^)
まだまだ他にもありますがピックアップして紹介しました。
最後までご覧頂き、ありがとう御座いました

この記事へのコメント
風子
塗装なども本格的で、さすがに器用なアルクノさんだけあって、丁寧に作られています
それに作って実際に使用もできるものですから、まさしく趣味と実益を兼ねてってことですね
長く愛用できるのでしょうが、ここまで沢山あるのだから、上のほうに鈴などをつけたりして、今日はコレを持っての山歩きと日替わりで楽しむのもいいかも
アルクノ
簡単に作れることを手順を示して伝えたかったのですが、褒めていただいて恐縮します。
私の場合は脚立を使ったり屋根に上ったりして剪定していますので、材料は20年間で手に入れたものです。
一旦杖にしておいたものを切断して、護身用ナイフの材料などに転用する場合もあります。
鈴を付けて日替わりに
紐をつけているのはありますが、鈴は無いので考えてみます。
yoppy702
ボクやったら、なにもせずに、そのままで使っちゃうでしょうね。(^^)
皮を剥ぐのも大変でしょうけど、その後の工程も大変ですね。特に、ひび割れの補修。その前工程で、発生が抑えられていたら不要なんでしょうけど…
塗装までいくと楽しそうですけど…
(見ている分には)
で、25本ですか。スゴイ!
それに、真っ直ぐじゃないから、
かえって味があります。
これも、ナイフ同様、展示対象ですね。(^^)
アルクノ
もう手順は分かっているので、ササッとやっちゃってますけど、意外と簡単なんです。
ひび割れ発生も、最後の写真の日当たりの良いところで乾燥させたので予想通りでした。
これで手順を説明できたので良かったと思っています。
なんにも加工せずに使用する方法もありますが、使用しているうちに樹皮が剥がれ落ちて、更に割れが発生します。
そして、生木のままだと強度が無いので乾燥行程はどうしても必要です。
と言う事で、この方法に辿り着きました。
塗装も色むらまで考えると結構難しいです。
木には樹脂が多く含まれているところや節など固い部分があって、そこは塗料が染み込みにくいんです。
濃い色を重ね塗りすると色むらが分かりにくい、と言う事でチョコレートタイプにしました
展示は、最後の2枚の写真を無期限公開中と言う事で、宜しく御願いします
KURI
どれもこのブログの文章のように丁寧に作られていて、本当に器用でいらっしゃるなぁと感心してばかりです。
>樹皮を剥いだ後そのまま放置しておくと
なるほど、そのままにしちゃうとこうなってしまうのだなぁとよく分かりました。こういうのってすごく参考になります。
アルクノ
本格的に歩き始める前からですが、準備の為に杖だけ作っていました。
歩き始めてからは、グリップ部分をどうするかでアイデアを取り入れて作るようになった、と言うことです。
作り過ぎですが^^;
この大きく割れてしまった失敗作を置いていて良かったと思いました。
「百聞は一見に如かず」とはこのことですね
ふぉるま
一本に掛かる工程も多くて驚きました
でも さすがに素敵な杖になってます
どの杖も仙人さんが持っていてもよさそうです(^^)
私なら10番が好き♪と思って記事を読んでいましたら え~っ 塗り替えちゃうんですかぁ・・・
アルクノ
暇に任せて25本も作ってしまいました^^;
仙人になるまで使っていきたいと思います
ふぉるまさんは10番がお好きですか。
色とスタイルが女性好みですよね。
では、女性が好きなチョコレート色にしましょう
yokkosan
ひび割れないように工夫も必要ですが、木を切る時期も
あるとうちのじいちゃんから聞いたことがあります。
アルクノ
木工細工をする為の木を切る時期は、水分をしっかり含んでいる梅雨時期を避け、乾燥している冬から春の方がいいと思います。
木が締まっているのと、剪定後は低温の環境で乾燥行程もゆっくりなので割れにくいと思います。
今回梅雨時期を選んだのは、私の山歩きの回数が減るので自宅での時間利用の為と言うことでした
降魔成道
アルクノ
釣り道具とは、ルアーですか?
水中での動きを想定して作るそうで、出来栄えにより釣果が違ってくるそうですね。
これは、トレッキングポールと言うよりジジ臭い杖ですが、選定した枝を直ぐ削れば簡単に作れます。
乾燥工程での配慮が必要ですが。