これから日本のジャズ界に登場するであろう、新人さんを紹介していきます。
現在は無名ですが今後頭角を現してくるかもしれません。
暖かく見守っていってあげたいと思っています。
第1回は2007年で第3回まで毎年開催されたが、第4回は第3回から2年後の2011年となりました。
以後2年毎に開催されるようです。
予選もあったようで、プログラムには決勝ライブと書かれています。
プログラムからの引用ですが、この大会の趣旨があります。
『「ジャズの街」神戸に2007年秋、本格的なジャズコンペが誕生しました。
芸術文化の祭典「神戸ビエンナーレ」の協賛事業にふさわしく次世代の担い手となる若手ミュージシャンの登竜門として、またジャズ文化の更なる振興のために、私達は神戸の新しい風を応援します。』
会場はシーサイドホテル舞子ビラ神戸にある「あじさいホール」で、16:00開演です。
明石海峡大橋の巨大なアンカーレイジ近くにあるJR舞子駅で下車して階段を上がり、プロムナードを東へ向かうと「舞子ビラ→」と表示がある。
地上へ降りて数分東へ歩くと、そのホテルが見えてくる。
車は坂を這い上がるように登るが、その手前に人用の斜行エレベーターがあって、約1分の乗車でホテル前まで運んでくれます。
初めて行く場所だが、迷いそうになるところは何処にも無かった。
ロビーから
階段上がるとその「あじさいホール」があり、案内嬢からプログラムや関連資料を頂く。
既に15:30を過ぎていたのか、並ぶことも無く、あっけなく入場となりました。
しかし、入り口で演奏中の撮影は禁止ですと言われる。
その会場風景です。
こじんまりとしたホールで、ネットで調べてみると294席でした。
2列目に着席。
開演まで時間があるのでプログラムの内容を説明しましょう。
表には開催日時や主催、後援団体の名前があります。
主催は神戸市民文化振興財団。
後援は神戸市教育委員会、FM・CO・CO・LO、ジャズやねん関西、WEY OUT WEST、神戸ジャズCITY委員会、ジャズジャパン、ジャズライフ、ブラストライブ、㈱エー・ティー・エヌです。
裏面にはTIME TABLEがある。
16:05から10分刻みで出演者名と曲目、演奏楽器の記載がある。
グループではなく全て個人名が書かれています。
各プレイヤーを後ろで支えるリズムセクションは、祖田修(ピアノ)、坂崎拓也(ベース)、佐藤英宣(ドラムス)です。
このジャズコンペに参加するのは14名で、その終了後に歴代グランプリ受賞者によるライブ演奏があり、最後の表彰へと進みます。
その審査員ですが
日本ジャズ界の重鎮、小曽根実さん(審査委員長)、
古谷充さん、
宗清洋さん、
Student Jazz Festivalでもお馴染みの日本学校ジャズ協会理事長の日下雄介さん、
更にサキソフォン奏者の宮崎隆睦さんに、
ピアニストのフィリップ・ストレンジさんです。
このコンテストは個人を対象としたものなので、演奏者個人の紹介になります。
写真が無いと非常にやりづらいものがありますが、挑戦してみます。
出場資格は29歳迄の方に与えられ、国籍は問わないようです。
最年少は18歳の男子高校生でした。
16:00にFM・CO・CO・LOでDJをしているクリストファー・マイケル・ノットさんが司会で登場し、開演です。
1 高野康 Satin Doll ギター(出演順 氏名 曲名 演奏楽器)
若くて学生風です。
ズボンの裾を折り返したラフスタイルですが、少し緊張気味でスイング感もパフォーマンスも少なめでした。
演奏後、マイケルさんの指名で審査員による講評があります(私が簡略化してメモしたものを元に書いています)。
古谷さん→出演順があとになるほど緊張する時間が長くなるので、トップバッターが緊張するとしても、早く終わるので好位置にあると考えた方がいい。
(演奏内容は)トップノートが弱く、全体的に物足りなさが残る。
日下さん→メロディーをもう少しはっきりと。
2 Jesse Forest Invitation ギター
イントロからジャズフィーリング溢れる音色で、抽象絵画を音楽で表現したような演奏でした。
黒シャツに黒ズボンでスリムな長身、終止目を瞑りトランス状態に入っているかのような雰囲気でした。
私としてはリズムセクションとの呼吸を合わせて欲しかった。
日下さん→ジャズフィーリングがあって良かった。イントロからメロディーに移る部分が分かりにくかった。
フィリップさん→ホールにあわせた「マ」が大事。
司会のマイケルさんがあとで通訳していましたが、「マ」と言う言葉を使うことで日本文化についても理解するフィリップさんであることが分かります。
邦楽では譜面に現せない「マ」をとても大事にしており、そこに心が込められています。
このホールの残響と「マ」をコラボすればさらにgoodな演奏になると言うような講評でした。
3 杉本陽拓 Confirmation アルトサックス
グレースーツの下は黒シャツでした。
リズムセクションと息を合わせ、後半ではアドリブが踊るようでした。
宮崎さん→オクターブ低く吹いている。ブレスの最後で息を抜いており音程が下がり気味。
古谷さん→チョイ惜しい。早い音符はOK。
4 山本晶 Donna Lee アルトサックス
スタイルは黒シャツに黒ズボン。
演奏をリズムセクションにバトンタッチする時、自分は脇へ引っ込む心遣いがありました。
難曲に超絶テクニックで挑んでいました。
これは演奏試合ですから、まず持てる技量を披露して審査員の心を捉えないと、と言う奏者の気持ちが分かりました。
選曲によるものでしょうが、演奏時間がチョイ短い印象でした。
古谷さん→チャーリーパーカーの中でも難しい曲で素晴らしい演奏。アタックの付け方に見せるものがある。
小曽根さん→フレージングが素晴らしい。
5 市川海容(いちかわかい) Cherokee アルトサックス
この方は更に超絶テクニックで、度肝を抜かれました。
メロディーラインの所だけ減速していましたが、カーブが少ないがややアップダウンのある直線コースをハイスピードで突っ走っている感じの演奏です。
バックのピアノさんは「ホーッ!」と呆気に取られたような顔付きで演奏していました。
日下さん→素晴らしい! パワーの上に感情が入るともっと良くなる。
宮崎さん→メロディーに工夫が欲しい。ジャズフィーリングとシンコペーションも加えて欲しい。
6 坂田雅枝 Left Alone アルトサックス
「富士通テンビッグバンド」に所属しているコンサートミストレスです。
過去ログ、第31回NABL Big Band Jazz Festival(2011.06.19)の5番手に登場しており、そこで写真も掲載しています。
バラード調のジャズですが、ハイスピードジャズのあとだっただけに、イージーリスニング風に聴こえました。
心を落ち着かせることが出来たので私は○印を付けました。
宮崎さん→アドリブは自分の言葉で喋っていた。同じ音が多かった点が気になるし、もっとドラマチックな展開が欲しい。
7 陸悠(くがゆう) Delta City Blue テナーサックス(ソロ)
最年少の高校3年生で、スタイルも高校生そのまま。
甲南高校のブラスアンサンブルに所属しており、過去ログ、昨年の第26回Japan Student Jazz Festival(2010.08.22)にラストで登場しています。
そのときも写真撮影ができなかったので巨乳君と表現してしまいましたが、外見も内容も更にスケールがでかくなっています。
ソロ演奏だが、パワフルで挑戦的な吹きっぷりです。
音もでかいので、天井付近の壁にヒビが入らないかと案じました。
古谷さん→リズムセクションは最初から要らないと言っているので、アンサンブルは下手なのでしょう(笑)。マイケル・ブレッカーをこのように吹いて、テクニックがあり余っているのでソリストとして頑張って欲しい。
宮崎さん→(自分も甲南ブラスアンサンブルに所属していたと前置きして)海外に出て自分の実力を知ったのち、経験を積んでいって欲しい。アーティストと自覚してコンポジションを組むといい。
前半はここで終了。
後半トップは女性ドラマーの登場で、ドラムス担当の佐藤英宣さんは楽屋待機です。
8 富永千尋 Blue Bossa ドラムス
上下を黒で決めていてシックだが、茶髪。
男の職業と決め付けていたが、高校生バンドでも女性ドラマーが増えつつあり、コンテストでも遂に登場したという感じです。
気持ち良く叩きまくっていて、陽気で明るい演奏でした。(インタビューでは)10歳から演奏しているそうで、既にベテランの様相です。
日下さん→サンバの陽気さが出ているが、ソロではテンポをずれさせては?
9 中山雄貴 In the stile of night トロンボーン
直前で演奏曲を変更したそうで、印刷が間に合わず司会者が口頭で述べるのみです。
この時点で?ですね。
用意していたJust Friendsが巧く吹けないの?と思ってしまいます。
吹き始めの音が小さくてアピール不足、更に音がぼやけているのが気になりました。
宗清さん→コンビネーションは○。スライディングが多すぎるので音がぴたっと止まらない。
もっとスピード感が出せるように。
10 今西祐介 Moment’s Notice トロンボーン
真面目風ダークスーツにネクタイなのが好感度アップです。
さっきと違って音がぴたっと決まっていて、早いフレージングにも遅れることなくテンポをとっています。
宗清さん→素敵な演奏です。曲中に洒落っ気を加えると更に良くなる。
11 Jim Funnnel Fuji ピアノ
外国の方が日本の富士をオリジナル曲で表現するという、日本人にとっては嬉しい展開です。
が、想像していたものより荒々しくてダイナミックな富士でした。
インタビューでは、日本女性と結婚して日本滞在中にこのコンテストがあることを知って応募した、と明かしていました。
フィリップさん→最初の「マ」のとりかたがGood! ジャズの伝統が含まれているが後半は音が多くなる。出だしの部分が良かったので、それを全体に広げていって欲しい。
というようなコメントでした。
12 二見勇気 Body & Soul ピアノ(ソロ)
シャツに黒ズボンスタイル。
バラードですが表情豊かに自分の世界を表現していました。
ホールが奏でる残響音も自分のものにしている感じです。
小曽根さん→素晴らしいので言うこと無し!
13 城門芙美子 Cheryl ピアノ
曲に合わせてか、カラフルなスカートスタイルでした。
同じ音域が多かったので、鍵盤をもっと幅広く使って欲しいと思いました。
インタビューでは、前回チャレンジしたが今回は29歳でラストチャンスです、と言っていました。
フィリップさん→前より良くなっているが、変わったハーモニーや変わった音程を用いると良い。
30歳は終わりでは無いのでこれから更に発展させてください。
14 秦野萌 Bolero ピアノ(ソロ)
黒のスーツスカートで可愛い感じの方でした。
クラシックで有名な曲です。
原曲そのまま、同じテーマの繰り返しですが、後半への盛り上げ方が良かったです。
弾き方に工夫がみられましたが、ジャズフィーリングは伝わってきませんでした。
小曽根さん→果たしてこれがジャズか?このスタイルだとクラシックへ進んだ方が良い。
右足のペダルを踏みっぱなしなのも気になる。
甘口辛口、厳しかったり優しかったりと、色んな講評が出場者に与えられましたが、全体のレベルとしては非常に高いんじゃないの?と思いました。
次回は2年後というのが寂しいですが、毎回視聴に訪れると次代のジャズシーンが予測できるかもしれませんね。
4時から6時半までとチョットお尻が痛くなるが、我慢できる範囲なので演奏に集中してリスニングできました。
小休止のあと歴代グランプリ受賞者によるセッションです。
第1回は大友孝彰(ピアノ)、第2回は高橋知道(テナー)、第3回は福代亮樹(テナー)です。
この3名に坂崎拓也(ベース)、佐藤英宣(ドラムス)が絡んでWテナーのクインテットになります。
3曲演奏されましたが、テナーによるインプロビゼイション対決が見事でした。
流れるような高橋さんに対してインパクトの強い福代さんでした。
さて、表彰ですが、その前に総評です。
小曽根さんは、レベルがドンドン高くなっているので、今後はハートを入れたインプロビゼイションが欲しいと言っていました。
古谷さんは、大変素晴らしい演奏が揃っていた。即興演奏の評価は突き詰めるとその人の人間性が評価されることになるので、その向上が必要です。
と心に響く言葉でした。
その結果です。
準グランプリ2名は、10番のトロンボーン今西祐介さんと、7番テナーサックスの陸悠君。
グランプリは5番のアルトサックスの市川海容さんでした。
気になるのは陸悠君で、審査員にはこの場は彼を落として欲しかった。
もっと修行を積んでグランプリを狙えるようになってから来い、と言ってあげた方が彼の為になった様な気がします。
器が大きいだけに(これ以上大きくなると床の補強が必要ですが)今はチャレンジさせるだけで良かったように思います。
しかしこれも結果なので、更に頑張って欲しいと思います。
今西祐介さんは、片岡雄三さんのような目の覚めるトロンボーンを目指して欲しいと思っています。
勿論オリジナリティーを持つことが一番大事ですが。
市川海容さんには、宮崎さんの言うジャズフィーリングを加えて、緩急自在のドライブ感のある演奏を期待しています。
2年後も様々な方の、更にハートのこもった演奏が聴けることを楽しみにしています。
我こそは、と言う方はこれから2年間みっちり練習をして欲しいと思います。
この記事へのコメント
ケン
残念でした。
生演奏は良いですよね。
来年の秋は行きたいです。
アルクノ
若々しくて元気なミュージシャンばかりなので、こちらもパワーをもらいました。
2年毎の開催なので、次回は2013年の10月第3土曜日辺りだと思います。