中高生によるビッグバンドジャズの祭典がやってきました。
出場校が増えたこともあって、本年より土日の2日間をかけて開催されることになりました。
20日の土曜日は中ホールで中学生が15校、大ホールでは高校生が15校、
21日の日曜日は大ホールで高校生15校が出場しました。
20日は鑑賞出来ず21日だけでしたが、それでもたっぷりとビッグバンドジャズを堪能することが出来ました。
昨年は8月22日に大ホールと中ホールで同日開催され、合計27校の参加がありました。
その大ホールでの様子は此方にライブレポートとしてアップしています。
https://arukuno.seesaa.net/article/201008article_10.html
11時開場ですが、自由席ということで早めに到着(10:41)。
館内に入り、開場を待つ。
いつもなら最前列ですが、演奏中は撮影が出来ないということで10列目に座る。
11時32分に司会の中野睦子(ちかこ)さんによる挨拶と注意事項の説明です。
演奏の様子はDVDに録画して販売されるので、今年も演奏中は一般の方の録音や撮影が出来ないことを告げます。
6名の審査員の方が名前の紹介と共に呼ばれ、舞台下手から登場して会場中央の審査員席へ向かいます。
開演は11:40からで、13:22までが第1部で7校の演奏。
休憩のあと第2部は14:00から16:30まで8校の演奏となります。
各校演奏されるのは2曲或いは3曲で、曲目によるメンバーチェンジ及び楽器の追加や変更は自由に行なわれていました。
曲名は全てプログラムから引用していますが、カナ振りを訂正したほうがいいようなところもあります。
また写真があればもう少し具体的に詳しくレポートできますが、私がプログラムに書き込んだメモと記憶が頼りなので多少あやふやな所があります。
その点はご了承下さい。
以下、表彰結果など交えながら紹介していきます。
その表彰結果ですが、何も書かれていないチームには奨励賞が授与されました。
第1部
1 正則(せいそく)学園高等学校EMP(東京)
男子校なのでしょう、メンバーは男性のみで黒シャツでピシッと決めていました。
1曲目は「ジョナ ジャム」で、コンガのソロが良かったですが、そのコンガ担当は演奏後のインタビューを受けていた部長さんでした。
2曲目は「ユリアス ドリーム」で、トランペットのソロから始まり、そのペットをフューチャーした流れになって演奏されました。
初出場で緊張していたようですが、フレッシュな演奏です。
2 広島県立福山工業高等学校FTHC(広島)
演奏中は入場することが出来ませんが、この2番手の演奏が始まる前にドドッと入ってきて、前の方は8割がた埋まりました。
ここの持ち味はクラシック風ジャズとでもいいましょうか、「ヤードバード組曲」や「マッカーサー パーク」にそれが現れていました。
サックスを7本揃えていて、バリトンが2本ありましたがその掛け合いなどがあれば尚良かった。
ラストの「フライト オブ ザ フー バード」ではミュートトランペット2本によるソロから始まる演奏で引き込まれましたね。
アップテンポでは○でした。
3 京都府立大江高等学校 Big Inlet Jazz Band(京都)
公立ですが、男性はサックス隊に一人だけだった様に思います。
「スウイングス ザ シング」は軽快な演奏で、「ベイリー パーク」で一転スローになりペットソロが○でした。
スローな曲になるとチームの技量が丸出しとなるので、そこら辺りをもう少し磨くといい様に思います。
「テイク ミー アウト トゥ ザ ボールゲーム」で締めくくりました。
4 ラメールジャズオーケストラ JAZZ PALETTE(島根)
学校の名前が無いので不思議に思いましたが、プログラムには「島根県で初めて、小中高生を対象にしたジャズバンドサークルです」とあります。
女性による指揮の「グルービン ハイ」ではスイング感溢れる二重丸の演奏でした。
2曲目から指揮者が男性に交代し「ホエン アイ フォール イン ラブ」とスローな曲になります。
指揮者のパフォーマンスが目立って其方の方に目が行きますが、その指導が行き届いているという印象を受けました。
創成期では教えることと技術向上が大切ですね。
成熟してくると、それを引き継ぐことが大事になるのでOBやOGとメンバーとの繋がりを広げていって欲しいと思います。
学校は違っても音楽で繋がっている、と言うのは素晴らしいことだと思います。
ラストは「チルドレン オブ ザ ナイト」でスイングするテナーソロが○でした。
指揮者の背中にあるニコニコマークがバンドカラーのようです。
演奏後のインタビューにありましたが、5~6校からメンバーが集まっているそうです。
5 名古屋石田学園星城高等学校 Seijou Jazz Sounds Unit(愛知)
サックス7本が前に並ぶ堂々たる布陣でユニフォームも上下黒で決めていました。
グレンミラーの「タキシード ジャンクション」で始まったが、歯切れの良い手馴れた演奏でした。
エリントンの有名な「イット ドント ミーン ア シング」ではバストロンボーンがこれまた歯切れがよくて○でした。
最後も歯切れ良く「ワン オクロック ジャンプ」で締めくくっていましたが、3曲あるので、スローな曲も聴きたかった。
6 伊丹市立伊丹高等学校 ICH☆IITA Jazz Ensemble(兵庫)
この学校は「第13回 Students Jazz Live(2011.04.29)」でも紹介していますので、興味のある方は御覧下さい。
https://arukuno.seesaa.net/article/201104article_10.html
その掲載写真で紹介しているように、頭に大きなリボンを付けている女性が全体に色を添えていました。
ここまでの出場校の中ではレベルが群を抜いていて、4月の時より更に大きく成長しており、3曲共素晴らしい演奏です。
ソロパートもプツンプツンではなく、適度な長さで、それも安心して聴けるものでした。
サックスは7人とも女性でしたが、スイング感溢れるもので聞き惚れてしまいました。
演奏が終わっての歓声と拍手もそれまでで最高!
予想通り数々の賞を受賞です。
団体賞は、JAJE会長賞とヤマハ賞及び甲陽音楽賞。
団体賞を三つも獲得したのはこのチームだけです。
個人賞は、トロンボーン二人がナイスプレイヤー賞。
おめでとうございます。
曲目ですが「トゥー ウェイ ストリート」の次はマイルスの「セブン ステップ トゥー ヘブン」でラスト曲は「タイム トラック」と玄人筋を唸らせる選曲でもありました。
7 関西大学北陽高等学校ジャズバンド部(大阪)
素晴らしい演奏のあとだったので比較されてしまいますが、もう少し歯切れの良さが欲しかった。
しかし皆を引っ張る、女性の笑みを浮かべてのドラミングが素敵で二重丸でした。
3曲目の「ホワット イズ ヒップ」がノリノリで良かったです。
赤い上着にはメンバー同士の落書きがあり、結束は固いと感じました。
ベストスイング賞を獲得です。
-休憩ー
昨年はホールを出て、道路向かいのラーメン屋でしたが、2部のスタートに戻れませんでした。
そこで改善策ですが、パンとおにぎりとお茶を持参し、ロビー脇の喫茶コーナースタンドでの昼食としました。
食事が終わってホールの様子です。
第2部(14:00~)
8 大阪府立泉陽高等学校 泉陽高校軽音楽部S.L.M.S(大阪)
「オール ウェル ザット エンズ ウェル」のあと、2曲目カウント・ベイシーの「バイ マイ サイド」ではベイシースタイルのピアノが光っており、
ガーシュインの「ストライク アップ ザ バンド」ではテナーソロがナイスでした。
サックス部門に力が入っていると感じました。
9 名古屋市立向陽高等学校 Seven Sounds Jazz Orchestra(愛知)
女性メンバーが主体で「ブルー ボッサ」と「ヤ ガッタ トライ ハーダー」の2曲でしたが、熱のこもった演奏でした。
2曲目、ピアノのノリがとても良かったです。
全員やり切ったという感じだったのでしょうか、終了してのインタビューでは声を詰まらせ、涙を堪えてのコメントでした。
おじさんは、こういうのを見ると胸が熱くなります。
審査員も心動かされたのでしょう、富士通テン賞とベストサンド賞のダブル受賞です。
聴衆を前にしての演奏ですから観客ウケするのも大事なことです。
特にジャズ発祥の地、神戸の観客は耳が肥えていて、全国一ですからね。
大勢の観客が、本日一番重要な審査員と言えるのかもしれません。
10 兵庫県立国際高等学校 HOPPIN’NOTE(兵庫)
「ザトロット」では小気味よいビブラフォンが演奏に色を添えていてお洒落でした。
スローな「エンブレッサブル ユー」では珍しくチューバをフューチャーした演奏です。
その奏者ですが、手には包帯、足にギブスと怪我をしています。
同じ学校の生徒でしょうか、うしろから大丈夫やろかと声がします。
これまた情感溢れる演奏で、目頭が熱くなってしまいました。
ラスト「アイ ウォナ ビー ライク ユー」ではラテン調にして明るい気分となりました。
賞ですが、怪我をされていた方とビブラフォン担当さんがナイスプレイヤー賞を受けていました。
11 京都府立工業高等学校 Manbou Jazz Band(京都)
「バック イン ブルー オーリンズ」でのギターソロが秀逸でした。
左手指先のフレット間の移動と右手によるピック捌きが指のダンスでも見ているようで、見事でした。
学校を抜け出してはいけませんが「クール スクール ドロップアウト」のあと、ラストはコール・ポーターの「イッツ オーラオト ウィズ ミー」。
打楽器が登場して、お祭り気分のラテン調でした。
神戸市教育委員会賞とナイスプレイヤー賞も一人が受賞です。
個人に与えられる最高の賞ですが、バークリー賞をベース担当の吉田諒平君が受賞していました。
バークリー賞はアメリカのバークリー音楽大学で夏季特別講習が受けられます。
あまり目立たないベースが受賞するのは珍しいことではないでしょうか。
おめでとうございます。
12 和歌山県立日高高等学校 Hidaka Big Band(和歌山)
ユニフォームは黒のTシャツで首には赤いタオルを巻いてガッツが感じられました。
その赤いタオルは高校野球を応援した時のものだとか。
ビッグバンドの甲子園といわれるこの大会です。
高校球児の意気込みを演奏会場にまで持ち込んだということでしょう。
「アウト オブ ザ ドッグハウス」「ベイリー パーク」「アリンザ」とみごとな流れで演奏していましたが、2曲目がスローテンポで全体的にバランスよく配合されており優秀賞を受賞です。
13 愛知県立尾北高等学校 OPEN HEART ENSNBLE(愛知)
「ホーン オブ エンテ」と9番手に登場した名古屋市立向陽高等学校も演奏した「ヤ ガッタ トライ ハーダー」の2曲でしたが、この曲、愛知では定番なのでしょうか。
向陽高校が素晴らしかっただけに比較されてしまいました。
ただ、ペットとサックスのソロバトルが光っていましたね。
ピアノソロの間にメンバー交代など手際も良かったです。
14 水戸短期大学附属高等学校 Express Jazz Orchestra(茨木)
このチーム、サックスがバリトン2本を含む8本の体勢で圧巻でした。
トランペットが5本、トロンボーンが6本と下段を厚くしている布陣です。
「ワークソング」ではフルート2本の可憐なソロとサックスのボリュームを対比させてスケール感を表現していました。
2曲目は「ラブ フォア セル」で3曲目は無かったですが、2曲とも同じようなテンポなので、変化が欲しかったですね。
サックスを前面に出し、ソロバトルでも繰り広げてくれたら、私も大拍手でしたが。
15 兵庫県立高砂高等学校 Big Friendly Jazz Orchestra(兵庫)
いよいよラストの此方は、トランペット6本、トロンボーン5本、サックス5本と標準的な布陣です。
スローな「サイド エフェクツ」でのリズム取りは見事でした。
「スプリングソング」のあとグレンミラーの「アンヴィルコーラス」では全身が感動に震える程の演奏でした。
サックスの扱いも見事でしたね。
このような大きな会場では、ペットやトロンボーンの音が遠くまで響きます。
そこで、強調すべき所はサックス隊全員が立ち上がり、腹に力を入れての演奏です。
こうするとボリュームが2段階アップ(?)になり迫力が出ます。
演奏後のインタビューでもバリトン担当の吉村部長はアンヴィルコーラスが気に入った様子でした。
コンマスのトランペット古河潤也君もその曲がお気に入りです。
前日の甲南高校を聴いていないのでなんともいえませんが、受賞したのは県知事賞でした。
グランプリの神戸市長賞は甲南高校に持っていかれてしまいました。
しかし、その古河潤也君とギターの酒井享友君がナイスプレイヤー賞を受賞!
神戸新聞社賞もさらっていったので、上出来ではないでしょうか。
注目のバークリー音楽大学賞
甲南高校のアルト奏者吉田隆一郎君と、
前述で紹介した京都府立でベース担当の吉田諒平君。
今回は3人選ばれ、なんと高砂高校の古河潤也君も受賞!
おめでとうございます。
昨年は2年生でこの大会に参加し、神戸市長賞獲得に貢献した彼です。
来年は参加できませんが、後輩の指導に力を発揮して頑張って下さい。
Big Friendly Jazz Orchestraチャリティーコンサートの楽しい様子は、此方で御覧いただけます。
https://arukuno.seesaa.net/article/201107article_4.html
実際はゲストの演奏のあとこの表彰式があったのですが、前後します。
ゲストバンドはグローバルジャズオーケストラで、スペシャルゲストは宮崎隆睦さん。
宮崎さんは神戸出身で今回市長賞を獲得した甲南高校ブラスアンサンブルに所属していました。
甲南大学に進学したがそのニューポートジャズには所属せず、独自に活動を展開する。
後に渡米してバークリー音楽院に留学し、帰国後98年にT-SQUAREに加入。
2年後に脱退し、06年にはソロアルバムを発表。
風貌は若々しいですが、もう四十代を迎えているので日本のベテランアルト奏者と言ってもいいでしょうね。
グローバルジャズの女性アルト奏者二人を両手に花にして、爽やかにアルト対決。
次にテナーの男性二人を両脇に、むさ苦しく(宮崎さんご本人の弁で)テナー&アルト対決。
最後に5人全員でソロの数珠繋ぎですが、川のような流れから最後は滝のようになっていく、素晴らしい演奏でした。
ゲストによる演奏が終了し、表彰式が終わって会場を出たのは18時前でした。
丸1日、数々の楽しい演奏をありがとうございました。
また、このような長文を最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
この記事へのコメント
toshi
いつも丁寧なコンサート記事を楽しみに拝見してます。
今回のタイトルの年号が昨年のままでしたので混乱してしまいました。(笑)修正をお願いです。
高砂の演奏はどの曲も素晴らしかったですね。こうやってまた次も聞きたくなりますね。
アルクノ
お久し振りです。
年号の件、早速修正しました。
混乱させてしまい、申し訳ありません
お恥ずかしい限りです。
高砂高校、3曲全てGoodでしたが、あのアンヴィルコーラスは又聴きたいですね。
シングルCDでもいいですから発売して欲しいです
スイングおじさん
有難うございました。
スチューデント・フェスティバルは
子供が中学の部活で参加しましたので
神戸まで見に行きましたので
懐かしいです。
アルクノ
ご子息様が参加ですか、素晴らしいですね。
西日本が主ですが、毎年愛知や更に東からの参加もあります。
ビッグバンドの若々しい生演奏には本当に感動させられますね。
風子
中高生とは思えぬ、迫力ある演奏会を満喫された様子がよく解りました
生で聴く醍醐味は・・もう病み付きですねo(^▽^)o
アルクノ
若いころからジャズは聴いていましたが、このような若い方による生のビッグバンドを聴くと心躍ります。
中学生でも素晴らしい演奏をするバンドがありますが、この日は高校生だけでした。
全部聴こうと思うと体が三つほど要りますね
ジャズ歴45年おじさん
高校生のジャズを聴いて今年で6年目になります。エネルギーをもらいに行っています。今年は2日にわたりましたが、家族に馬鹿にされながらも、2日間一人で聴かせてもらいました。まさに、高校野球と同じで、熱意とうまくなりたい気持ちが直接伝わってくる、楽しい時間でした。今年もありがとうと申し上げたい。表彰では、葺合高校はいつもながら迫力のある、きれみのあるソロ等圧倒されましたので当然ですが、私は高砂高校の素晴らしいアンサンブルに感動しましたので、神戸市長賞ものだと思いました。両校を同じ日に聴けないのは残念な日程です。
アルクノ
心のこもったコメントをありがとうございます。
このコンサート4年目なので、ジャズ歴と共に私の先輩に当たります。
宜しく御願いします。
仰る通りです。
私も高校生の熱意とパワーに圧倒されながら、何時も感動しています。
この前日にあった葺合高校や甲南高校及び他の皆さんの演奏を聴けなかったのは残念な思いです。
家族になんと言われようと、毎年このコンサートを聴きに行かれ、若いパワーを貰うようにすればいいように思います。
ジャズライブレポートはたまにしか書きませんが、また気が向いたときにでもお立ち寄り下さい。